素のまま恋




「あのーこれは、見なかったことに……とか」

「バッチリ見た。なんなら現在進行系で見てる」

「あー……忘れてくれ、じゃない。クダサイ、マセ」


今さら敬語もどきを使ったってあとのまつり。


「絶対無理。ま、別に誰にも言わねぇけど……ほらよ」


男の子は立ち上がり、私に手を伸ばす。
立つために手を貸してくれるのか、顔に似合わず優しいみたい。


「あ、ありがと」


手を借りて立ち上がり、小さくだけどお礼を告げれば、


「……っち」


何故か舌打ちをされた。
しかも手を離してくれない。押しても引いてもゆるまないし、力強くて変な攻防戦になる。


「動くな。ちょっと大人しくしてろ」


なんで初対面で、手繋いでなきゃいけないんだろう。
ブスくれた顔で仕方なく大人しくしてると、男の子は制服のポケットから絆創膏を取り出した。

しかも……ピンクのうさぎ柄の絆創膏を。


「今、尻餅ついたそん時だろ。指、少し切れてた」

「え……あ、ほんとだ。どうもありがとう……」


痛くなかったから分からなかった。


「ん」


握られていた手の方の指に貼られたうさぎ柄の絆創膏。

──ぎ、ギャップありすぎるっ……。

ダメだ。少し口元がにやけてしまって。


「ず、ずいぶんとっ可愛い絆創膏をお持ちね」

「……笑ってんじゃんねぇよ。言っとくが俺の趣味じゃねぇからな。勘違いすんなよ」


別に気にしなくていいのに。
私だって言いふらしたりしないから。