『貴女なら、もし進路変更をギリギリのラインでしたとしても大丈夫だとは思うけど……』って。
大学でおもてなしを学ぶところを選べば、基本的なことから応用まできちんと学べるとは思ったことある。
でも、わざわざ大学に行かなくとも私の一番の先生はお母さんだから。
お母さんのそばで、自分の旅館で、実践的な学びを得た方が私にはいいという結論に落ち着いた。
この判断が本当に正しいのかなんて分からないけど。
やっぱりああしとけばっていうのも後に出てくる可能性だってあるから。
そうなった時は、お母さんと話すだけ。
またまだ現役女将でいられるはずなんだから、きっと私が何かしたいと言っても、否定されない。お母さんはそういう人だもの。
「ない、と言い切っておく。まずは旅館よ。自分がやらないと旅館をたたむことになってしまうし」
「そっか……なら俺は引き続き雇ってもらえるわけだな。お前が女将してる時も」
「……っ知らない」
気にしていたことが吹っ切れたのか、貴公子は笑顔を向けてくる。
……なんでそんな笑顔なんだか。
私は、貴公子とは逆で吹っ切れないし、笑えない──



