そのグラウンドを私は暗くて誰もいない教室の窓からもらった髪飾りを手にしながら眺めていた。
──旅館とは違う忙しさだったなぁ。
一日、フルタイムで当番だなんてはじめてだったけど、三年間で一番楽しかったかもしれない。
私の中で、充実した文化祭になったってことだ。
……さて、私は片付けはないから帰るとしようかな。
最後の文化祭をもう一度目に焼き付けたことだしね。
浴衣のまま帰ってしまおう。
「……ん、あれ?貴公子?」
教室を出てすぐ、扉横に貴公子が立っていた。
「おう。フルタイム、一日お疲れってことで。これ差し入れ」
やたらと冷えているペットボトルを受け取るも、貴公子は後夜祭に行かないんだろうか。
「もしかして……待ってたの?」
「……わりぃかよ」
「声かけて良かったのに」
「いんだよ別に。そんな待ってねぇし。……帰るなら送る」
「後夜祭は?」
「興味ねぇ。ほら、行くぞ」
興味ねぇ、か。貴公子らしいな。
それに最後の文化祭、その帰りに一人じゃないっていうのは……嬉しい。



