「うわっ……って、貴公子?何してるの?……ランニング?」
手を置いた主は、どうやら息を切らした不良感が薄らと漂う貴公子らしく。
「ちげぇけどっ……お前は何してんだよ、今の誰?」
「今の?……ああ、道をきかれてただけ。だけど?」
「……は」
マジかよ、と気の抜けた声が返ってきて、なんだかイタズラ心がうまれた。
「なーに?ナンパされてると思ったんですか、貴公子は」
冗談まじりに伝える。
バーカって小突かれてもいい。そう思って。
なのに、
「……だったらわりぃかよ」
だって。
な……なによ、真面目な顔して返すなんて。
貴公子らしくない。
それに、ドキドキしてる私も……らしくない。
「皆森はなにしてんの?旅館は?」
「私は呉服屋さんに」
「呉服屋?着物でも作んのか」
「ううん、文化祭で浴衣着るんだけど、せっかくなら長く着れるように新調していいって言われて、反物を見に」
「ふうん。浴衣着んのか。なら俺も行く。センスなら負けねぇ自信あるぜ?」
華道してるから、と自信満々に言う貴公子を連れて、呉服屋へ。
いつ来ても選ぶのには時間がかかる。
そのことを伝えたら見るの嫌になるかなと思うも、貴公子は全然気にしてない様子だった。
だから気兼ねなくこれはこれは!と手に取っていく。



