素のまま恋


「いただきます、っと」

「ねぇ、払うよ私も。奢られるようなことしてないし」

「誘ったのは俺だからいーんだよ」


パンにかぶりつく貴公子は首を振る。


「んな高価なものじゃあるまいし。デートは男が奢るもんだ」

「ゴホッ……!!」

「はぁ?なんだよ急に」


無料の水を飲みかけて、思いきりむせった。


「で、デートっ?これ……」


胸を叩きながら尋ねた。

全然そんなつもりなかったから、自分でもひくくらいの動揺っぷり。


「その、つもり」

「……そ、そうか」


これは決してデートじゃない!と頭の中では全否定したのに、貴公子が目をそらしながらもそうだと言うから……受け入れてしまった。





それから、パンの話をしてたけど、いまいち何を答えたかうろ覚え。

帰りは帰りで、また私が掴まないから、早く早くと急かされた。
また、心臓がはやいだの言ってきたから、二度目の頭突き。
道中は行きも帰りも同じことをしていたと思う。



「──ドライブサンキュ。貴公子」


バイクからおりてヘルメットを返せば、貴公子はニッと口角をあげた。


「ああ、たまにはいいだろ?旅館のことも、花のこともなしにぶらつくのも。お前がいたから、今日はいつもより充実したわ」

「……私も、楽しかった。から、ほんとありがと。帰り、気をつけて」

「おう。じゃあ、また教室でな」



──なんだろ、ずいぶんと今日は貴公子の機嫌が良かったような。

良いことでもあったとか?