旅館にいて、楽しそうに笑うこともほとんどない。
「いや、そうじゃねぇよ。大体子供の頃は皆可愛いもんだろ。だからお前にも可愛い時期あったんだなーって」
「……過去形じゃないか。いいけどさ。ほら、満足したでしょ?リビング行くよ」
「だな。喉かわいたわ」
下におりて、ソファにくつろぐ貴公子にお茶を出し、雨がやむまでそう長くはなかったけど、共通の話題と言えば学校だと……授業中の話や面白かったことをお互いに話し合った。
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目を覚ますと同時に、スマホが鳴ってることに気付き、手探りで探した携帯を見て、ぎょっとした。
唐突にきた連絡に、思わず二度見するも、ディスプレイには【鼓椿冴】と表示されていて。
「え、何」
躊躇いながらも電話に出れば、開口一番に
『明日ヒマ?』とのこと。
明日は華道の教室ではないし、土日ではない。祝日で旅館の手伝いはなく、確かに暇だけど。
『……おいバカ聞いてんのか?』
「バカじゃありません、聞こえてますよなあに?華道の特別レッスンとかならお断りだけど?」
『はぁ?なんで俺がそんなことしてやんなきゃならねぇんだよ』
じゃあ何さ。
遊ぼうと、誘いの電話ってこと?──なんて思うも、この貴公子に限ってそんなことはないだろう。
ましてや私と休日を過ごそうだなんて、華道の場で十分嫌気がさしていると思われるのに、ありえない。



