素のまま恋



やはり仮病でもなんでも使って、帰った方がいいかもしれない。
私も貴公子も、予想外の展開だもの。

お腹が痛い?は子供じみてるかな。
なら頭痛?

このまま沈黙でいるのはさすがにきついから、帰る言い訳を考えようと思った矢先、貴公子は頭を掻きながら息を吐いた。


「はぁ……言われたからにはやるしかねぇな」

「え、あの……」


貴公子が咳払いをひとつして、畳の上に正座をした。
だからそれにつられて、私も荷物を置き正座に。


「改めまして、鼓椿冴です。今日からどうぞよろしくお願いいたします」


今しがたのだるさは消え、華道界の貴公子と呼ばれるにふさわしい面持ちになるものだから……つい、息を呑む。

貴公子がそこは割り切るというなら、私も仮病とか言ってる場合じゃない。


「こ、こちらこそよろ──」

「……つーことで、スパルタでいくから泣き言言うなよ。お前の前で爽やか貴公子はしねぇからな」


なんだこの変わりようは。
挨拶部分だけは、本当にプリンス感あったのに、一瞬にして不良感漂う和服男子になりかわった。



「こっち来い。始めんぞ──」