サイズが一回り違う、男の人の手。
千影はその繋いだ手をじっと見つめた後、私の薬指の付け根に、そっと自分の唇を寄せた。
ちゅ、と小さな音が寝室に響く。
「ねぇ、亜子」
「ん?」
「もうさ、こういう朝のやり取りも、毎日やってると当たり前になってきたよね」
千影の声が、いつになく穏やかで、少しだけ真面目なトーンに変わった。
「そうだね。実家にいた頃から数えたら、もう何年千影を起こしてるか分かんないや」
私が苦笑混じりに言うと、千影は繋いだ指に少しだけ力を込めた。
「俺、これから先も、30年後も50年後も、亜子に起こされたい……っていうか、亜子以外に起こされたいと思わない」
「え……?」
心臓が、ドクンと大きく跳ねた。
「付き合って長くなったし、同棲もしてるから今更な感じになっちゃうけど……ちゃんと籍入れよう。俺と結婚して」
前髪の隙間から覗く千影の瞳は、これ以上ないほど真剣だった。
結婚してというストレートな響きが、すとんと胸の奥に落ちてきて、視界がじんわりと滲む。

