「ん?亜子、ずいぶん余裕だね?集中して……」
「なっ……んんっ………」
あっと息をつく暇もなく、隙間を埋めるような深いキスが降ってきた。
彼の熱い唇が、何度も角度を変えながら私の唇を割って入ってくる。
優しく、けれど独占欲を隠そうともしない強引なキスに、私の身体から完全に力が抜けていった。
頭の中が真っ白になって、今日の仕事の段取りなんて、どこか遠くへ吹き飛んでしまいそうになる。
どれくらい時間が経ったのだろう。
ようやく唇が離されたとき、私は彼の胸元を掴んだまま、小さく息を切らしていた。
「……ん、よくできました」
千影は満足そうに微笑むと、私の乱れた髪を優しく指先で整えてくれる。
その仕草があまりにも愛おしくて、私は照れ隠しに彼の胸をポカポカと叩いた。
「もう……千影のバカ。本当に遅刻したら怒るからね」
「大丈夫、時間は計算してある」
千影はふっと息を漏らすと、抱きしめる力を少しだけ緩めた。
けれど、私を腕の中から出す気はないらしい。そのまま私の左手を引き寄せると、自分の大きな手と指を絡ませた。

