アンドロイド総務部員(※心の中はエセ関西弁)は、一途なチャラ男の底なし沼から抜け出せない

【第74話】氷室視点
ファーストキスを経て、律さんの「素の可愛さ」はさらに天井知らずで加速していた。
会社ではなんとかいつもの「総務部監査官」を保とうとしているみたいだけど、俺と目が合うたびに、一瞬だけ借りてきた猫みたいに肩をビクッとさせて、顔をリンゴみたいに真っ赤にする。その姿を独り占めできている優越感で、俺の毎日の幸福度は限界を突破していた。
そして、梅雨が明けた7月の週末。
俺の部屋に、律さんが初めて遊びにくることになった。
「お、お邪魔します……氷室先輩」
玄関を開けると、少し綺麗めな白のサマーニットを着た律さんが、小さなトートバッグを両手でぎゅっと抱えるようにして立っていた。
部屋に入り、ソファに並んで座る。心なしか、律さんの背筋がいつも以上にピシッと伸びている気がした。
「律さん、そんなに緊張しなくて大丈夫だよ。お茶、何がいい? 麦茶でいい?」
「あ、はい。……ありがとうございます」
お茶を淹れて隣に戻ると、律さんはじっと自分の膝の上を見つめていた。
その耳の裏が、最初からずっと微かにピンク色に染まっている。
「……先輩」
「ん?」
律さんはゆっくりと顔を上げると、潤んだ瞳で俺を真っ直ぐに見つめてきた。その小さな手が、おずおずと俺のシャツの袖を掴む。
「私……今日、先輩の家に来るって決まったときから、その……たくさん、覚悟してきました」
「え……?」
「お付き合いするのも、手を繋ぐのも、キスも……全部、先輩が初めてで、私、すごく不器用ですけど……。でも、先輩のことが、本当に、本当に大好きだから……」
そこまで一気に言うと、律さんは恥ずかしさが限界に達したのか、俺の腕にしがみつくようにして顔を伏せてしまった。
(……っ!!!)
俺の頭の中で、何かが派手に弾け飛んだ。
そんな健気で、ピュアで、まっすぐな告白をされて、理性を保っていられるほど俺はできた人間じゃない。
「律さん……もう、手加減できなくなっても知らないからね」
「……はいっ……」
腕の中で、小さく、だけど確かに頷く気配。
俺は彼女の華奢な身体をそっとソファに押し倒し、今度は深く、果てることのない底なしの愛を注ぎ込むように、彼女の唇を塞いだ。