【第72話】氷室視点
復縁してからというもの、俺の恋人は完全に「バグ」を起こしていた。
いや、バグなんて冷たい言葉じゃない。これまで頑丈に隠されていた、彼女の「素」の可愛さが、一気に全面開花してしまったのだ。
仕事が終わり、会社の最寄り駅から二つ離れた駅の静かな夜道を、二人で並んで歩く。
会社を一歩出た律さんは、借りてきた猫のように大人しく、俺の斜め後ろをちんまりと付いて歩いていた。
「律さん」
「は、はいっ」
「手、繋いでもいい?」
そう言って俺が右手を差し出すと、律さんは一瞬動きを止め、それから蚊の鳴くような声で「……はい」と呟いた。
差し出された、少し震える小さな手。
そっと指を絡めて、恋人繋ぎにする。
「……っ!」
その瞬間、律さんの身体がビクッと跳ね上がった。
街灯の光に照らされた彼女の顔は、耳の裏まで真っ赤に染まっていて、繋いだ手のひらからは、彼女の鼓動がそのまま伝わってくるんじゃないかってくらい、ドクドクと速い脈が打っている。
「律さん、緊張してる?」
「し、して……ます。その、男の人と、こうやって歩くの……初めて、なので……」
消え入りそうな声で、だけど誤魔化さずに本音を伝えてくれる律さん。
上目遣いで俺を頼るように見つめてくるその瞳は、少し潤んでいて、今までの「監査官」の面影はどこにもない。
(おいおいおい待ってくれ……神田律、素になるとこんなに可愛いの!?)
(今まで『チャラ男先輩!』ってキレてた子と同一人物かよ……! 破壊力がギガント級すぎて、今度は俺の心臓が爆発しそうなんだけど!!)
「あの、先輩……?」
「……ごめん、なんでもない。ちょっと律さんが可愛すぎて、俺の処理能力が追いつかないだけ」
俺は繋いだ手にギュッと力を込めた。このピュアで、世界一愛おしい女の子を、もう二度と離さないと心に誓いながら。
復縁してからというもの、俺の恋人は完全に「バグ」を起こしていた。
いや、バグなんて冷たい言葉じゃない。これまで頑丈に隠されていた、彼女の「素」の可愛さが、一気に全面開花してしまったのだ。
仕事が終わり、会社の最寄り駅から二つ離れた駅の静かな夜道を、二人で並んで歩く。
会社を一歩出た律さんは、借りてきた猫のように大人しく、俺の斜め後ろをちんまりと付いて歩いていた。
「律さん」
「は、はいっ」
「手、繋いでもいい?」
そう言って俺が右手を差し出すと、律さんは一瞬動きを止め、それから蚊の鳴くような声で「……はい」と呟いた。
差し出された、少し震える小さな手。
そっと指を絡めて、恋人繋ぎにする。
「……っ!」
その瞬間、律さんの身体がビクッと跳ね上がった。
街灯の光に照らされた彼女の顔は、耳の裏まで真っ赤に染まっていて、繋いだ手のひらからは、彼女の鼓動がそのまま伝わってくるんじゃないかってくらい、ドクドクと速い脈が打っている。
「律さん、緊張してる?」
「し、して……ます。その、男の人と、こうやって歩くの……初めて、なので……」
消え入りそうな声で、だけど誤魔化さずに本音を伝えてくれる律さん。
上目遣いで俺を頼るように見つめてくるその瞳は、少し潤んでいて、今までの「監査官」の面影はどこにもない。
(おいおいおい待ってくれ……神田律、素になるとこんなに可愛いの!?)
(今まで『チャラ男先輩!』ってキレてた子と同一人物かよ……! 破壊力がギガント級すぎて、今度は俺の心臓が爆発しそうなんだけど!!)
「あの、先輩……?」
「……ごめん、なんでもない。ちょっと律さんが可愛すぎて、俺の処理能力が追いつかないだけ」
俺は繋いだ手にギュッと力を込めた。このピュアで、世界一愛おしい女の子を、もう二度と離さないと心に誓いながら。



