【第67話】氷室視点
「あ、氷室くん、この前の営業データの件なんだけど……」
「うん、白鳥さん。そこはね――」
別れを告げられてから3日後。営業部のフロアで新しく入った白鳥さんに資料の説明をしている時だった。
ふと、オフィスの入り口に気配を感じて視線を向けると、総務部の書類を持った律さんが佇んでいた。
ほんの一瞬、時間にしてわずか0.5秒。
律さんは、俺と白鳥さんが並んで楽しそうに話している姿を、信じられないくらい悲しそうな目で見つめ――そして、視線を逸らす次の瞬間にはアンドロイドな彼女になっていた。
いつもの鉄面皮、いつもの冷徹な一瞥。
だけど、そのあまりにも鮮やかすぎる「仮面の切り替え」が、俺の脳内で繋がらなかったすべてのエラーログを一線に繋いだ。
(あの一瞬の目……。ただの『相性のバグ』なんかで別れを切り出した人間の目じゃない。……まさか律さん、俺と白鳥さんの大学時代の関係(過去)に気づいて……?)
完璧な標準語の、綺麗な白鳥さん。
そして、冷徹な標準語を完璧に使いこなす、アンドロイドの仮面を被った律さん。
(バカかよ、律さんは……! どんだけ自己評価低いんだよ!)
(俺が昔の恋人に似てるからあんたを選んだとでも思ったのか? 自分のせいで俺が本物と結ばれないから、身を引こうとしたって言うのか……!?)
全ての理由を自分の目で、五感で理解した瞬間、俺の胸の中にあったモヤミヤは、激しい愛おしさと感情の濁流へと変わった。
「あ、氷室くん、この前の営業データの件なんだけど……」
「うん、白鳥さん。そこはね――」
別れを告げられてから3日後。営業部のフロアで新しく入った白鳥さんに資料の説明をしている時だった。
ふと、オフィスの入り口に気配を感じて視線を向けると、総務部の書類を持った律さんが佇んでいた。
ほんの一瞬、時間にしてわずか0.5秒。
律さんは、俺と白鳥さんが並んで楽しそうに話している姿を、信じられないくらい悲しそうな目で見つめ――そして、視線を逸らす次の瞬間にはアンドロイドな彼女になっていた。
いつもの鉄面皮、いつもの冷徹な一瞥。
だけど、そのあまりにも鮮やかすぎる「仮面の切り替え」が、俺の脳内で繋がらなかったすべてのエラーログを一線に繋いだ。
(あの一瞬の目……。ただの『相性のバグ』なんかで別れを切り出した人間の目じゃない。……まさか律さん、俺と白鳥さんの大学時代の関係(過去)に気づいて……?)
完璧な標準語の、綺麗な白鳥さん。
そして、冷徹な標準語を完璧に使いこなす、アンドロイドの仮面を被った律さん。
(バカかよ、律さんは……! どんだけ自己評価低いんだよ!)
(俺が昔の恋人に似てるからあんたを選んだとでも思ったのか? 自分のせいで俺が本物と結ばれないから、身を引こうとしたって言うのか……!?)
全ての理由を自分の目で、五感で理解した瞬間、俺の胸の中にあったモヤミヤは、激しい愛おしさと感情の濁流へと変わった。



