【第61話】
「神田さん、お昼、B定食の唐揚げにする? それともA定食の焼き魚?」
社食の券売機の前で、佐藤先輩が尋ねてきた。
「総務部員としての栄養バランスを考慮した結果、本日はA定食のオメガ3脂肪酸を摂取すべきと判断します」
私は寸分の狂いもないポーカーフェイスで食券を取り出した。
だが、視覚センサーの端には、数つ前の列で営業部の同僚と楽しそうに談笑している氷室先輩の姿がしっかりとプロットされていた。
席につき、佐藤先輩と向かい合って焼き魚を口に運ぶ。
すると、私のポケットの中でスマートフォンが微かに振動した。
『さっきすれ違った時、A定食の食券持ってるの見えたよ。魚食べる律さんも可愛い。午後も頑張ろうね(猫のスタンプ)』
(食堂の混雑の中で何を見とんじゃチャラ男先輩!!!)
(動体視力ギネス級かワレ! ほんでなんやその可愛い猫のスタンプは! 営業部でバリバリ契約取ってくる肉食獣のくせに、私に対してだけ小動物の皮被るなボケナス!)
「……神田さん? 魚の骨でも引っかかった? すごい顔が険しいけど……あ、耳赤いよ?」
「いえ。咀嚼プロセスにおける一時的なエラーです。熱いお茶による冷却処理を実行します」
私はお茶を喉に流し込み、暴走する胸のCPUを必死に宥めた。この秘密のデータ通信は、私の精神衛生にとってあまりにも劇薬すぎた。
「神田さん、お昼、B定食の唐揚げにする? それともA定食の焼き魚?」
社食の券売機の前で、佐藤先輩が尋ねてきた。
「総務部員としての栄養バランスを考慮した結果、本日はA定食のオメガ3脂肪酸を摂取すべきと判断します」
私は寸分の狂いもないポーカーフェイスで食券を取り出した。
だが、視覚センサーの端には、数つ前の列で営業部の同僚と楽しそうに談笑している氷室先輩の姿がしっかりとプロットされていた。
席につき、佐藤先輩と向かい合って焼き魚を口に運ぶ。
すると、私のポケットの中でスマートフォンが微かに振動した。
『さっきすれ違った時、A定食の食券持ってるの見えたよ。魚食べる律さんも可愛い。午後も頑張ろうね(猫のスタンプ)』
(食堂の混雑の中で何を見とんじゃチャラ男先輩!!!)
(動体視力ギネス級かワレ! ほんでなんやその可愛い猫のスタンプは! 営業部でバリバリ契約取ってくる肉食獣のくせに、私に対してだけ小動物の皮被るなボケナス!)
「……神田さん? 魚の骨でも引っかかった? すごい顔が険しいけど……あ、耳赤いよ?」
「いえ。咀嚼プロセスにおける一時的なエラーです。熱いお茶による冷却処理を実行します」
私はお茶を喉に流し込み、暴走する胸のCPUを必死に宥めた。この秘密のデータ通信は、私の精神衛生にとってあまりにも劇薬すぎた。



