【第55話】
「……先輩、ここが要求仕様書の変更先ですか? 総務部の厳密な監査基準に照らし合わせても、ここはあまりにも……その、プライベートの出力が高すぎます」
私が声を微かに震わせながら見上げたのは、新宿の喧騒から少し離れた場所にある、緑豊かな新宿御苑の入り口だった。
当初の予定では、そのままオシャレなコンセプトカフェになだれ込むはずだった。だが、先輩が提示した代替案は、まさかの「公園でのピクニック(風の散策)
「カフェもいいけど、さっきの映画館で神田さん、すごく緊張してたでしょ? だから、少し静かなところで、のんびり風に当たりながら話したいなと思って」
先輩はチケットを購入し、私に爽やかな笑顔を向けた。
(優しすぎかワレ!!!)
(私の過負荷(オーバーヒート)を察知して、冷却(クーリング)期間を設けてくれたって言うんか! チャラチャラしたデートスポットで攻め立てるんじゃなくて、あえてマイナスイオン満載の庭園を選ぶなんて、どんだけ私の扱いに最適化(チューニング)されとんねん!!)
広大な芝生と、初夏の青空。
風が優しく吹き抜ける木陰のベンチに二人で腰掛けると、確かに私の高騰していたCPUの温度が、じわじわと下がっていくのが分かった。
「はい、これ。途中で買った冷たい緑茶。……神田さん、お疲れ様」
手渡されたペットボトルを受け取り、私は小さく息を吐いた。
「……ありがとうございます。氷室先輩。お心遣い、感謝いたします」
完璧な標準語。だけど、先週までのあの「冷酷なシャットダウン」のトーンではない。
私は自分の膝の上で、さっきまで先輩の大きな手に握られていた右手を、そっと見つめた。まだ、その手のひらには、先輩の熱が消えずに残っているような気がしていた。
「……先輩、ここが要求仕様書の変更先ですか? 総務部の厳密な監査基準に照らし合わせても、ここはあまりにも……その、プライベートの出力が高すぎます」
私が声を微かに震わせながら見上げたのは、新宿の喧騒から少し離れた場所にある、緑豊かな新宿御苑の入り口だった。
当初の予定では、そのままオシャレなコンセプトカフェになだれ込むはずだった。だが、先輩が提示した代替案は、まさかの「公園でのピクニック(風の散策)
「カフェもいいけど、さっきの映画館で神田さん、すごく緊張してたでしょ? だから、少し静かなところで、のんびり風に当たりながら話したいなと思って」
先輩はチケットを購入し、私に爽やかな笑顔を向けた。
(優しすぎかワレ!!!)
(私の過負荷(オーバーヒート)を察知して、冷却(クーリング)期間を設けてくれたって言うんか! チャラチャラしたデートスポットで攻め立てるんじゃなくて、あえてマイナスイオン満載の庭園を選ぶなんて、どんだけ私の扱いに最適化(チューニング)されとんねん!!)
広大な芝生と、初夏の青空。
風が優しく吹き抜ける木陰のベンチに二人で腰掛けると、確かに私の高騰していたCPUの温度が、じわじわと下がっていくのが分かった。
「はい、これ。途中で買った冷たい緑茶。……神田さん、お疲れ様」
手渡されたペットボトルを受け取り、私は小さく息を吐いた。
「……ありがとうございます。氷室先輩。お心遣い、感謝いたします」
完璧な標準語。だけど、先週までのあの「冷酷なシャットダウン」のトーンではない。
私は自分の膝の上で、さっきまで先輩の大きな手に握られていた右手を、そっと見つめた。まだ、その手のひらには、先輩の熱が消えずに残っているような気がしていた。



