アンドロイド総務部員(※心の中はエセ関西弁)は、一途なチャラ男の底なし沼から抜け出せない

【第48話】氷室視点
金曜日の23時30分。自宅のベッドの上で、俺は何度もスマートフォンの画面を確認していた。
明日はついに、神田さんとの本当のデートだ。
仕事ではどんなトラブルもスマートに処理できる自信があるのに、明日着ていく服のコーディネートが決まらず、クローゼットの前で2時間も立ち尽くしてしまった。
(……いつもスーツだからな。あんまりキメすぎても引かれるし、カジュアルすぎても失礼だし……)
画面を開くと、神田さんからの最後のメッセージが表示されている。
『明日の降水確率は10%です。傘の携行は不要と判断します。定刻通り稼働します』という、徹底して事務的な一文。
だけど、俺は知っている。
彼女がこうしてわざわざ連絡をくれること自体が、彼女なりの「楽しみにしている」というサインなのだ。あの鉄壁の仮面の下で、彼女も今頃、明日何を着ようか迷ったりしているのだろうか。
「……あー、緊張する」
枕に顔を埋めて呟く。
学生時代、どんなに綺麗な女の子と遊びに行く時も、こんな風に心臓が痛くなるほどの緊張感を覚えたことはなかった。
俺が今、世界で一番手に入れたいのは、あの不器用で、真っ直ぐで、俺の全部をエセ関西弁でぶった斬ってくれる女の子の心だけだ。
「待っててね、律さん」
俺は初めて、声に出して彼女の名前を呼んでみた。
明日の5ページの仕様書には書いていない、俺の「本気の一途さ」という最大のサプライズを用意して、彼女を迎えに行く。