【第47話】
月曜日の朝、9時05分。
私のデスクのトレイに、寸分の狂いもなくファイリングされた厚さ数ミリの冊子が滑り込んできた。表紙には端正なフォントで『土曜日におけるプライベート稼働要件定義書』と印字されている。
「約束通り、5ページ。フォントサイズは11、余白も社内規定通り。総務部監査官のチェックをお願いします」
デスクの傍らに立つ氷室先輩は、いつものチャラついた笑みを封印し、完璧なビジネスパーソンスマイルを浮かべていた。
「……確認いたします」
私はポーカーフェイスを維持したまま、1ページ目をめくった。
(……なんやこれ! タイムラインが5分刻みで構造化されとるやないかい!)
(移動ルートの混雑率予想から、14時00分『糖分補給(京都宇治抹茶パフェ)』の糖度計データまで添付されとる! 完璧すぎるわ! 総務部の私が作る報告書より美しいガントチャート組んでくるなチャラ男先輩!)
「……っ、美しいガントチャート組んでくるなチャラ男先輩!!!」
「あっ、神田さん、心の声の出力ポートが開いてるよ」
先輩がクスクスと肩を揺らして笑った。私は慌てて眼鏡のブリッジを押し上げ、冷徹な低音ボイスを起動する。
「失礼。ドキュメントの完成度の高さに対する、純粋なシステム評価です。本要件定義書は承認(パス)いたします。土曜日、10時00分、仕様通りの場所に現地集合とします」
「了解。承認ありがとうございます、神田監査官」
先輩は嬉しそうに目を細めると、俺のフロアへ戻るよ、と言って去っていった。
PC画面に向き直った私の胸の奥で、CPUのファンがキュルキュルと音を立てて高速回転を始める。これは決して、週明けの業務負荷のせいではなかった。
月曜日の朝、9時05分。
私のデスクのトレイに、寸分の狂いもなくファイリングされた厚さ数ミリの冊子が滑り込んできた。表紙には端正なフォントで『土曜日におけるプライベート稼働要件定義書』と印字されている。
「約束通り、5ページ。フォントサイズは11、余白も社内規定通り。総務部監査官のチェックをお願いします」
デスクの傍らに立つ氷室先輩は、いつものチャラついた笑みを封印し、完璧なビジネスパーソンスマイルを浮かべていた。
「……確認いたします」
私はポーカーフェイスを維持したまま、1ページ目をめくった。
(……なんやこれ! タイムラインが5分刻みで構造化されとるやないかい!)
(移動ルートの混雑率予想から、14時00分『糖分補給(京都宇治抹茶パフェ)』の糖度計データまで添付されとる! 完璧すぎるわ! 総務部の私が作る報告書より美しいガントチャート組んでくるなチャラ男先輩!)
「……っ、美しいガントチャート組んでくるなチャラ男先輩!!!」
「あっ、神田さん、心の声の出力ポートが開いてるよ」
先輩がクスクスと肩を揺らして笑った。私は慌てて眼鏡のブリッジを押し上げ、冷徹な低音ボイスを起動する。
「失礼。ドキュメントの完成度の高さに対する、純粋なシステム評価です。本要件定義書は承認(パス)いたします。土曜日、10時00分、仕様通りの場所に現地集合とします」
「了解。承認ありがとうございます、神田監査官」
先輩は嬉しそうに目を細めると、俺のフロアへ戻るよ、と言って去っていった。
PC画面に向き直った私の胸の奥で、CPUのファンがキュルキュルと音を立てて高速回転を始める。これは決して、週明けの業務負荷のせいではなかった。



