アンドロイド総務部員(※心の中はエセ関西弁)は、一途なチャラ男の底なし沼から抜け出せない

【第46話】氷室視点
「……検討、いたします。ただし、仕様書の事前提出を条件とします」
真っ赤になった顔を隠すように、パフェのグラスを見つめてそう呟いた神田さん。
その言葉を聞いた瞬間、俺の胸の中で、これまで感じたことのないような熱い感情が爆発した。
拒絶じゃない。アンドロイドの冷たいシャットダウンでもない。
彼女は、俺が彼女のプライベートへ踏み込むための「デートの申請」を、ついに承認(パス)してくれたんだ。
「仕様書だね。了解、最高のデートプランを200ページ構成で作成して、月曜日の朝一番に総務部に提出するよ。神田監査官の厳しいチェックにも耐えられるようにね」
「……200ページは過剰なドキュメントです。リソースの無駄遣いです。5ページ以内にまとめてください」
いつものエセ関西弁ではないけれど、少しだけ尖った彼女らしい口調が戻ってくる。その可愛さに、俺の心臓はもう限界突破(オーバーフロー)寸前だった。
「わかった、5ページに凝縮する。……楽しみだな、土曜日」
俺が微笑むと、神田さんはようやく俺と目を合わせ、それから「……私も、不具合(バグ)が起きない程度には、期待しておきます」と、眼鏡の奥の黒い瞳を少しだけ和ませて微笑んだ。