アンドロイド総務部員(※心の中はエセ関西弁)は、一途なチャラ男の底なし沼から抜け出せない

【第41話】
金曜日の定時、17時30分。
私はデスクの上の書類を完璧に整え、PCのシャットダウンボタンを押した。いつもならこのまま最速で改札を抜け、自宅という名のセーフティエリアへ帰還する。
だが、今日の私の足取りは重い。理由は、私のスマートフォンに格納された、1件のショートメッセージ。
『医務室の約束、覚えてる? 今日の18時、駅前のカフェで待ってます。一途だから、神田さんが来るまで動かないよ』
(動かんかいアホンダラ!!! 忠犬ハチ公のつもりかワレ! 駅前のど真ん中でそんなイケメンが微動だにせず立っとったら、金曜日の仕事終わりの通行人の迷惑やろがい!!!)
「……っ、通行人の迷惑やろがい!!!」
「えっ、何がですか神田さん!?」
隣の席の佐藤先輩が、お茶を吹き出しそうになりながらこちらを見た。私はすかさず眼鏡のブリッジを押し上げ、冷徹なトーンで上書きした。
「失礼。週末の駅前の混雑緩和について、総務部としての懸念が脳内ドキュメントから漏洩しました。お先に失礼します」
早足でオフィスを後にする。
エレベーターの鏡に映る自分の顔は、相変わらずのポーカーフェイス。だけど、胸の奥のCPUは、さっきから「プライベートな時間」という想定外のシステム要件を処理しきれず、完全にオーバーヒートを起こしていた。