【第34話】氷室視点
「氷室、お前いい加減にしろよ! なんで経営企画のお前が、総務部や開発の肩を持って営業部に盾突くんだ!」
営業部の会議室で、怒号が響く。机を叩く部長の顔は真っ赤に変色していた。
だが、俺は一歩も引かなかった。手元の資料をしっかりと握りしめ、真っ直ぐに部長の目を見据える。
「盾突いているわけではありません。総務部が提示しているセキュリティ要件を無視して顧客データを連携すれば、万が一の漏洩の際、会社の社会的信用は失墜します。それは営業部にとっても最大の不利益のはずです」
「綺麗事を言うな! 現場の利便性が下がると言っているんだ!」
「ですから、利便性を損なわない代替案をここに提示しています。開発チームと徹夜で検証したスキームです。これなら総務部の基準もクリアできます」
俺が差し出したのは、ここ数日、一睡もせずに作り込んだ100ページを超える修正要件定義書だ。
かつての俺なら、こんな泥臭い揉め事からは適当に距離を置き、最大公約数の妥協点を見つけてスマートに終わらせていただろう。誰かに嫌われてまで、自分の手を汚すような真似はしなかった。
だけど、今は違う。
神田さんが守ろうとしている総務部の規律や、彼女が正しいと信じるビジネスの論理を、俺が身を挺してでも証明したかった。口先だけの「一途」じゃない。俺が本気で彼女と、彼女の仕事に向き合っていることを、行動で示したかった。
「……検討してください。これが、このプロジェクトを成功させる唯一の道です」
深く頭を下げ、会議室を出る。
廊下に出た瞬間、強烈な目眩がして壁に手を突いた。ここ数日、まともに食事も睡眠も摂っていない身体が、悲鳴を上げているのが分かった。
だけど、不思議と心は軽かった。
フロアの窓から見える総務部のオフィスを見つめ、俺は乱れた呼吸を整えた。待ってて、神田さん。俺の全部を賭けて、あんたの信頼を取り戻してみせるから。
「氷室、お前いい加減にしろよ! なんで経営企画のお前が、総務部や開発の肩を持って営業部に盾突くんだ!」
営業部の会議室で、怒号が響く。机を叩く部長の顔は真っ赤に変色していた。
だが、俺は一歩も引かなかった。手元の資料をしっかりと握りしめ、真っ直ぐに部長の目を見据える。
「盾突いているわけではありません。総務部が提示しているセキュリティ要件を無視して顧客データを連携すれば、万が一の漏洩の際、会社の社会的信用は失墜します。それは営業部にとっても最大の不利益のはずです」
「綺麗事を言うな! 現場の利便性が下がると言っているんだ!」
「ですから、利便性を損なわない代替案をここに提示しています。開発チームと徹夜で検証したスキームです。これなら総務部の基準もクリアできます」
俺が差し出したのは、ここ数日、一睡もせずに作り込んだ100ページを超える修正要件定義書だ。
かつての俺なら、こんな泥臭い揉め事からは適当に距離を置き、最大公約数の妥協点を見つけてスマートに終わらせていただろう。誰かに嫌われてまで、自分の手を汚すような真似はしなかった。
だけど、今は違う。
神田さんが守ろうとしている総務部の規律や、彼女が正しいと信じるビジネスの論理を、俺が身を挺してでも証明したかった。口先だけの「一途」じゃない。俺が本気で彼女と、彼女の仕事に向き合っていることを、行動で示したかった。
「……検討してください。これが、このプロジェクトを成功させる唯一の道です」
深く頭を下げ、会議室を出る。
廊下に出た瞬間、強烈な目眩がして壁に手を突いた。ここ数日、まともに食事も睡眠も摂っていない身体が、悲鳴を上げているのが分かった。
だけど、不思議と心は軽かった。
フロアの窓から見える総務部のオフィスを見つめ、俺は乱れた呼吸を整えた。待ってて、神田さん。俺の全部を賭けて、あんたの信頼を取り戻してみせるから。



