【第19話】
「神田さん、本当に10分だけでいいから! このマッピングの確認、君のトリプルA級のチェック能力が必要なんだよ」
時計の針は17時45分。定時を15分過ぎたオフィスで、氷室先輩は私のデスクの横に張り付いていた。手にはカラフルな付箋が大量に貼られたA3のシステム構成図。
私はすでにバッグを肩にかけ、デスクの引き出しに鍵をかけた状態だった。
「お断りしますと言ったはずです、氷室先輩。私の本日のリソースは全て使い切りました。これ以上の稼働は、労基署へのセルフ密告対象となります」
「そこをなんとか! ほら、これ、お詫びの『セキュリティ解除キー(第2弾)』!」
先輩がポケットからサッと取り出したのは、これまた有名店の高級個包装クッキーだった。しかも、ご丁寧に私の大好きな「塩キャラメル味」だ。
私の脳内のプロ漫才師が、パイプ椅子から飛び上がって机を叩いた。
(また物で買収しようとしとるなコラ!!! ほんでなんで毎回私の好みをピンポイントでスナイプしてくんねん! 総務部の個人情報データベースハッキングしたんかワレ! 焼き菓子で動くほど私のセキュリティは安いないわ!)
「……っ、総務部のデータベースハッキングしたんかワレ!!!」
「ひえっ!」
通りすがりのシステム課の課長が、驚きのあまり持っていたマグカップを落としそうになった。
やってしまった。本日3回目、通算何度目かわからない大誤爆。しかも今回は「ハッキング」という、総務部として一番物騒なワードを叫んでしまった。
私は一瞬で頭に血が上るのを感じながら、ロボットのように首を90度回し、課長に向かって深く一礼した。
「……失礼いたしました。昨今のサイバーセキュリティリスクに対する、我が部の防犯意識の向上を促すためのシュプレヒコールです。問題ありません」
「そ、そうか……神田さん、熱心だね……」
課長は引きつった笑いを浮かべて去っていった。私は顔面を再びチタン合金に戻し、氷室先輩をギロリと睨みつけた。
「神田さん、本当に10分だけでいいから! このマッピングの確認、君のトリプルA級のチェック能力が必要なんだよ」
時計の針は17時45分。定時を15分過ぎたオフィスで、氷室先輩は私のデスクの横に張り付いていた。手にはカラフルな付箋が大量に貼られたA3のシステム構成図。
私はすでにバッグを肩にかけ、デスクの引き出しに鍵をかけた状態だった。
「お断りしますと言ったはずです、氷室先輩。私の本日のリソースは全て使い切りました。これ以上の稼働は、労基署へのセルフ密告対象となります」
「そこをなんとか! ほら、これ、お詫びの『セキュリティ解除キー(第2弾)』!」
先輩がポケットからサッと取り出したのは、これまた有名店の高級個包装クッキーだった。しかも、ご丁寧に私の大好きな「塩キャラメル味」だ。
私の脳内のプロ漫才師が、パイプ椅子から飛び上がって机を叩いた。
(また物で買収しようとしとるなコラ!!! ほんでなんで毎回私の好みをピンポイントでスナイプしてくんねん! 総務部の個人情報データベースハッキングしたんかワレ! 焼き菓子で動くほど私のセキュリティは安いないわ!)
「……っ、総務部のデータベースハッキングしたんかワレ!!!」
「ひえっ!」
通りすがりのシステム課の課長が、驚きのあまり持っていたマグカップを落としそうになった。
やってしまった。本日3回目、通算何度目かわからない大誤爆。しかも今回は「ハッキング」という、総務部として一番物騒なワードを叫んでしまった。
私は一瞬で頭に血が上るのを感じながら、ロボットのように首を90度回し、課長に向かって深く一礼した。
「……失礼いたしました。昨今のサイバーセキュリティリスクに対する、我が部の防犯意識の向上を促すためのシュプレヒコールです。問題ありません」
「そ、そうか……神田さん、熱心だね……」
課長は引きつった笑いを浮かべて去っていった。私は顔面を再びチタン合金に戻し、氷室先輩をギロリと睨みつけた。



