【第17話】
「――ですから、今回のフェーズ1では、アジャイル開発手法をベースにしつつ、各部署のKPIにコミットするためのダッシュボードのUI/UXをブラッシュアップし、シナジーを最大化させるスキームでリスケジュールしたいと考えています」
水曜日の午後。プロジェクトの定例ミーティングで、氷室先輩はホワイトボードの前に立ち、カタカナ混じりのプレゼンを繰り広げていた。手には高級そうな細身の油性ペン。
私は会議室の席で、完璧な姿勢のままノートPCのキーボードを叩いていたが、次第にタイピングする指先が怒りで震え始めていた。
(アジャイル……コミット……UI/UX……スキーム……)
(……おいコラ。お前の口はシリコンバレー生まれのネイティブスピーカーか!? 聞いてりゃ横文字のバーゲンセールやないかい! 『シナジーを最大化させるスキーム』って何や! 日本語で『みんなで仲良く頑張る手順』って言えやボケェ!)
「神田さん、ここまでで何か総務部側からアグリー(同意)できるポイントはある?」
氷室先輩がホワイトボードの前で、親指と人差し指で顎を挟み、いかにも『デキるビジネスマン』風のポーズでこちらを振り返った。その無駄に長い足と、爽やかな笑顔が本当に腹立たしい。
脳内のプロ漫才師が、ついに我慢の限界を迎えてセンターマイクを掴んだ。
「……っ、日本語で『みんなで仲良く頑張る手順』って言えやボケェ!!!」
静寂に包まれた会議室に、私のドスの利いたエセ関西弁が轟いた。
やってしまった。本日2回目の大誤爆である。
会議室の隅にいたシステム開発会社の担当者が「えっ、仲良く……?」と手元の資料を落とし、総務部の後輩は怯えた目で私を見ている。私は血の気が引くのを感じながら、手元のタッチパッドを猛烈にスクロールして、何食わぬ顔で眼鏡のブリッジを押し上げた。
「……失礼。総務部における、今後の業務円滑化のためのスローガンが口から漏れました。続けてください」
「――ですから、今回のフェーズ1では、アジャイル開発手法をベースにしつつ、各部署のKPIにコミットするためのダッシュボードのUI/UXをブラッシュアップし、シナジーを最大化させるスキームでリスケジュールしたいと考えています」
水曜日の午後。プロジェクトの定例ミーティングで、氷室先輩はホワイトボードの前に立ち、カタカナ混じりのプレゼンを繰り広げていた。手には高級そうな細身の油性ペン。
私は会議室の席で、完璧な姿勢のままノートPCのキーボードを叩いていたが、次第にタイピングする指先が怒りで震え始めていた。
(アジャイル……コミット……UI/UX……スキーム……)
(……おいコラ。お前の口はシリコンバレー生まれのネイティブスピーカーか!? 聞いてりゃ横文字のバーゲンセールやないかい! 『シナジーを最大化させるスキーム』って何や! 日本語で『みんなで仲良く頑張る手順』って言えやボケェ!)
「神田さん、ここまでで何か総務部側からアグリー(同意)できるポイントはある?」
氷室先輩がホワイトボードの前で、親指と人差し指で顎を挟み、いかにも『デキるビジネスマン』風のポーズでこちらを振り返った。その無駄に長い足と、爽やかな笑顔が本当に腹立たしい。
脳内のプロ漫才師が、ついに我慢の限界を迎えてセンターマイクを掴んだ。
「……っ、日本語で『みんなで仲良く頑張る手順』って言えやボケェ!!!」
静寂に包まれた会議室に、私のドスの利いたエセ関西弁が轟いた。
やってしまった。本日2回目の大誤爆である。
会議室の隅にいたシステム開発会社の担当者が「えっ、仲良く……?」と手元の資料を落とし、総務部の後輩は怯えた目で私を見ている。私は血の気が引くのを感じながら、手元のタッチパッドを猛烈にスクロールして、何食わぬ顔で眼鏡のブリッジを押し上げた。
「……失礼。総務部における、今後の業務円滑化のためのスローガンが口から漏れました。続けてください」



