【第12話】氷室視点
月曜日の朝一番。
狙い通り、神田さんは俺の差し出したマカロンとセリフに対して、完璧にバグを起こしてくれた。
「……っ、声帯にマイナスイオン飼うとんのかワレ!!!」
目を丸くして、両手で慌てて口を押さえている神田さん。
黒髪ボブの隙間から見える耳たぶが、みるみるうちに真っ赤に染まっていく。
いつもの冷徹な「アンドロイド神田」の面影はどこにもない。ただの、めちゃくちゃに可愛い、動揺した女の子がそこにいた。
(っ……! やばい、破壊力が強すぎる)
俺は自分の口元を手で覆い、必死で笑いと、心臓の激しい鼓動を噛み殺した。
社内の奴らに見せてやりたい。これが、お前らが「ロボット」って呼んでる神田律の、本当の姿だぞ、と。
「神田さん」
「……な、何でしょうか。今のは総務部内の音声テストであり、他意はありません」
「音声テストにしてはキレが良すぎるよ。あと、マイナスイオンは飼ってないけど、神田さんにそう言ってもらえるなら、これから毎日この声で挨拶するわ」
俺が意地悪く微笑むと、彼女は眼鏡の奥の黒目で、俺を親の仇かのように睨みつけてきた。
手強い。本当に手強いし、絶対に俺に懐こうとしない。
だけど、こうしてたまに「本音」がぽろっと声に出てしまうところが、たまらなく愛おしかった。
周りの女性たちは、俺が少し優しくしたり、甘い言葉をかけたりすれば、すぐに微笑みを返してくれる。
でも、神田さんは違う。俺が真っ直ぐぶつかればぶつかるほど、彼女は全力のツッコミで打ち返してくる。その泥臭くて、真っ直ぐな掛け合いが、俺の「一途な心」をさらに激しく揺さぶっていた。
「マカロン、残さず食べてね。システムが完全にダウンするまで、俺、諦めないから」
俺はそう言い残して、自分のフロアへ戻るために歩き出した。
背後から「誰がダウンするか! 格式高い総務部をナメんなボケナス!」という、小さな、でも確かな小声のツッコミが聞こえて、俺は肩を揺らして笑った。
月曜日の朝一番。
狙い通り、神田さんは俺の差し出したマカロンとセリフに対して、完璧にバグを起こしてくれた。
「……っ、声帯にマイナスイオン飼うとんのかワレ!!!」
目を丸くして、両手で慌てて口を押さえている神田さん。
黒髪ボブの隙間から見える耳たぶが、みるみるうちに真っ赤に染まっていく。
いつもの冷徹な「アンドロイド神田」の面影はどこにもない。ただの、めちゃくちゃに可愛い、動揺した女の子がそこにいた。
(っ……! やばい、破壊力が強すぎる)
俺は自分の口元を手で覆い、必死で笑いと、心臓の激しい鼓動を噛み殺した。
社内の奴らに見せてやりたい。これが、お前らが「ロボット」って呼んでる神田律の、本当の姿だぞ、と。
「神田さん」
「……な、何でしょうか。今のは総務部内の音声テストであり、他意はありません」
「音声テストにしてはキレが良すぎるよ。あと、マイナスイオンは飼ってないけど、神田さんにそう言ってもらえるなら、これから毎日この声で挨拶するわ」
俺が意地悪く微笑むと、彼女は眼鏡の奥の黒目で、俺を親の仇かのように睨みつけてきた。
手強い。本当に手強いし、絶対に俺に懐こうとしない。
だけど、こうしてたまに「本音」がぽろっと声に出てしまうところが、たまらなく愛おしかった。
周りの女性たちは、俺が少し優しくしたり、甘い言葉をかけたりすれば、すぐに微笑みを返してくれる。
でも、神田さんは違う。俺が真っ直ぐぶつかればぶつかるほど、彼女は全力のツッコミで打ち返してくる。その泥臭くて、真っ直ぐな掛け合いが、俺の「一途な心」をさらに激しく揺さぶっていた。
「マカロン、残さず食べてね。システムが完全にダウンするまで、俺、諦めないから」
俺はそう言い残して、自分のフロアへ戻るために歩き出した。
背後から「誰がダウンするか! 格式高い総務部をナメんなボケナス!」という、小さな、でも確かな小声のツッコミが聞こえて、俺は肩を揺らして笑った。



