【第10話】氷室視点
目の前で、背筋をピンと伸ばして「きつねうどん」を美しい所作で啜っている神田さんを見て、俺は心の底から感心していた。
普通、あんな風に真っ直ぐ見つめて口説き文句みたいなことを言えば、大抵の女の子は目を逸らすか、顔を赤らめる。
なのに、彼女は眉ひとつ動かさず、社内規定を読み上げて俺を突き放した。
(いや、マジで手強いな、神田律……。最高にそそる)
社内の奴らは、彼女のことを「融通の利かないロボット」とか「鉄面皮」とか言う。
でも、俺は知っている。
さっきオフィスで俺のハッピーセットなミスに激怒したとき、彼女の黒い目は、信じられないくらい生き生きと輝いていた。あの鮮やかなエセ関西弁のツッコミを聞いた瞬間、俺の胸の奥で、何年も眠っていた感情がドクンと跳ねたのだ。
俺は昔から、一途だ。
一度「この人だ」と思ったら、周りにどれだけ可愛い子がいても、目移りなんて絶対にしない。
そして今、俺のレーダーは、目の前で静かに油揚げを噛み締めている彼女を、完全に『気になる存在』としてロックオンしていた。
「神田さん」
「何でしょうか。早く食べないと麺が伸びます」
「俺さ、決めたわ」
「何をですか」
「神田さんのその鉄の仮面、俺が絶対に剥がしてみせる。これから毎日、覚悟しといて」
俺がニカッと笑うと、神田さんはうどんを飲み込み、器を静かに置いた。
そして、今日一番の、冷徹で、かつ美しい微笑みを浮かべた。
「お断りします。私のセキュリティは、国家機密レベルですので」
(……くぅー! 言うねぇ!)
冷たくされればされるほど、俺の中の『一途なスイッチ』がカチリと音を立てて入っていく。
この鉄壁の城をどうやって落とすか。
考えただけで、明日からの会社に行くのが、楽しみで仕方がなくなっていた。
目の前で、背筋をピンと伸ばして「きつねうどん」を美しい所作で啜っている神田さんを見て、俺は心の底から感心していた。
普通、あんな風に真っ直ぐ見つめて口説き文句みたいなことを言えば、大抵の女の子は目を逸らすか、顔を赤らめる。
なのに、彼女は眉ひとつ動かさず、社内規定を読み上げて俺を突き放した。
(いや、マジで手強いな、神田律……。最高にそそる)
社内の奴らは、彼女のことを「融通の利かないロボット」とか「鉄面皮」とか言う。
でも、俺は知っている。
さっきオフィスで俺のハッピーセットなミスに激怒したとき、彼女の黒い目は、信じられないくらい生き生きと輝いていた。あの鮮やかなエセ関西弁のツッコミを聞いた瞬間、俺の胸の奥で、何年も眠っていた感情がドクンと跳ねたのだ。
俺は昔から、一途だ。
一度「この人だ」と思ったら、周りにどれだけ可愛い子がいても、目移りなんて絶対にしない。
そして今、俺のレーダーは、目の前で静かに油揚げを噛み締めている彼女を、完全に『気になる存在』としてロックオンしていた。
「神田さん」
「何でしょうか。早く食べないと麺が伸びます」
「俺さ、決めたわ」
「何をですか」
「神田さんのその鉄の仮面、俺が絶対に剥がしてみせる。これから毎日、覚悟しといて」
俺がニカッと笑うと、神田さんはうどんを飲み込み、器を静かに置いた。
そして、今日一番の、冷徹で、かつ美しい微笑みを浮かべた。
「お断りします。私のセキュリティは、国家機密レベルですので」
(……くぅー! 言うねぇ!)
冷たくされればされるほど、俺の中の『一途なスイッチ』がカチリと音を立てて入っていく。
この鉄壁の城をどうやって落とすか。
考えただけで、明日からの会社に行くのが、楽しみで仕方がなくなっていた。



