スパダリの溺愛はスーツを着崩すように

翌朝の出社。
あんなふうに大事そうに抱きしめられて私は意識してしまっていた。
私は彼女のフリなんだからしっかりしなきゃ。
これは恋なんかじゃない。
きっと男性に抱きしめられて意識しちゃっただけだ。
でも黒澤社長だからいいのであって……そうじゃなくて…もう黒澤社長のことで頭がいっぱいだ…黒澤社長は私には遠い人、私の憧れの人だ。

大好きなKUROSAWAのスーツを生み出す黒澤社長が好きなのであって勘違いしちゃいけない。

ぐるぐる考えて出社していたら、急に周りの女性社員が騒がしくなった。

黒澤社長が出社して来たのだ。
どうしよう…こういう時彼女として黒澤社長に挨拶した方がいいのかな?で
も無理!こんな騒がしいの私は苦手だ。

できれば目立たず平穏な生活を送りたい。
昔から人見知りでうまく人と関われなかったけど、今の部署は居心地が良かった。
仕事は褒められることが多くて今は仕事が楽しかった。
逃げようとしたら…。

「彩乃」

「黒澤社長…」

周りがますます騒がしい。
黒澤社長から女性社員に声をかけるなんてきっとめずらしいんだ。

「なんで逃げんの?」

「だって…」

「来て…」