好きになったのは大嫌いな先生



小学校3年生でもやっぱりお医者さんが怖いと泣く子がまだちらほらいる。けど秀くんと着いてきてる男の看護師さんが優しく上手くなだめながら診察は順調に進んだ。

けど最後の1人だけどうしも怖くて一歩踏み出せない子が残ってる。光希ちゃん。他の生徒はみんな終わって先に教室に帰って行ったから、教室には秀くんと看護師さんと私と光希ちゃんだけ。さっきまでの賑やかさがなくなってシーンとなる教室。

「光希ちゃん、なーんも痛いこと、怖いことないから大丈夫だよ?おいで?」

男の看護師さんが優しく声をかけるけど、目に涙を溜めて近くに行くことができない。

「じゃあさ、みな先生と一緒に行ってみようか!先生の膝の上なら怖くないんじゃない??」

そう提案してみると

「…うん…グズッ。…頑張る。」

なんとかやる気になってくれた。光希ちゃんと手を繋いで、ゆっくりとみつきちゃんのペースで秀くんのもとへ近づく。そして先生の前の椅子で私の膝の上に乗せる。

私は平然を装ってるけど、医者になった秀くんとこんな目の前で座ってることに一気に心拍数が上がる。大丈夫。見られてるのは私じゃなくて光希ちゃん。そう言い聞かして必死に心を落ち着かせた。

「じゃあ、ちょっと服の上からモシモシするよ?胸の音聞くだけだからね。」

秀くんの低くて優しい声が響き渡る。真剣な顔で胸の音に意識を向ける秀くん。間近で見る秀くんは鼻筋が通ってて顔が整ってる。昔からイケメンだと騒がれてはいたけど、相変わらずかっこいいなぁなんて思いながら見ていた。

「…はい、ちょっと深呼吸してみて。」

光希ちゃんは言う通りに大きく息を吸って吐く。けど近くにある私からも分かるくらいゼイゼイとした音が聞こえる!?

「…ちょっと胸の音ゼイゼイしてるね?喘息とか言われたことある?」

「…うん。お薬ももらってる。」

「そっか。今泣いてたのもあると思うけど、あんまり良くない音だね。今日か明日にでも近いうちにいつも行ってる病院に行って先生に相談した方ががいいと思うよ。」

「……」

「お母さんにお手紙書いておくからね?」

「……うん」

消え入りそうな小さな光希ちゃんの返事に先生はちょっと怒ったような顔になる。

「お手紙ちゃんとお母さんに渡して、ちゃんと病院行くんだよ?このまま放っておいたら苦しくなって、手に負えなくなっちゃうからね?」

「……」

「分かりましたか?」

「…はい」

「よし、えらい。約束だよ。」

そう言って、他にも軽く検査をして無事光希ちゃんの診察も終わった。お医者さんの秀くん、基本優しいんだけど、なんだろう…少し怖いかもしれない。