好きになったのは大嫌いな先生



健斗さんと他愛のない話をしてる時と、誰かが急いで入ってきた。

もちろん愁くん。

昨日会った時とは違う。白衣に聴診器を首からかけた、学校検診の時と同じ医者モードの愁くん。

「美奈お待たせ。少し遅かったから逃げられたかとちょっと思っちゃったけど、ちゃんと来てくれたんだね。えらい。」

「…うん。」

また緊張が強くなってきて、震えを誤魔化すようにカバンを必死に握りしめる。愁くんは優しい口調で話してくれてるけど、白衣を着てるっていうだけで怖くて、目を合わせることができなくて俯く。

「そんなに怖がらなくて大丈夫だよ。俺何も怒ってないし、まだ何もしないよ。」

愁くんが頭を撫でながら、下から顔を覗き込むように目を合わせてくれる。

分かってる。分かってるんだけど…怖くて涙が溢れてくる。

「ほら泣かない、泣かない。」

そう言ってティッシュを渡してくれた。

「…グズッ…ありがとう…」

「今日の体調は?熱はどうなの?嘘はなしね。」

ちょっと医者のスイッチが入ってる。

「…体調は…昨日と変わらない。熱は…朝は39度4部だった。」

「そっか。続くと辛いよな。今日からしっかり検査してまずは原因突き止めよう。」

「……」

もう逃げることはできないけど、まだ現実を見たくなくて返事ができない。

「不安たくさんだろうし、一緒にいてあげたい気持ちは山々なんだけど、今日外来混んでてさ。まだ患者さんみないとだから、午後から検査とかするからとりあえず健斗と病棟行っててもらおうかな。」

そうだよね。愁くんは私だけの先生じゃない。私なんかに構ってる時間もないよね。

「私は大丈夫。仕事がんばってね。」

そう強がって作り笑顔で返事をした。