好きになったのは大嫌いな先生



「美奈のその顔色の悪さ見たら、医者モードになるよ。」

「……」

昔は面倒見のいいお兄ちゃんのような存在で、優しい愁くんで大好きだったけど、今みたいに医者のスイッチが入ってる愁くんは好きになれない。

もう帰ろうかな?そんなことを思い、ハルにライン入れようとスマホを出すと、また上から奪われる。

「なに!?スマホ返してよ。」

「俺のライン入れておくから。絶対に消すなよ。」

そう言ってラインを登録され、スマホを返された。

「今日はもう帰るしょ?俺も帰る。タクシーで送っていくよ」

「タクシーぐらい1人で乗れるよ。」

「その顔色の悪さに加えて、ビールも結構飲んでるだろ。倒れられたら嫌だから、頼むから送らせてくれ。」

愁くんは通りかかったタクシーをとめた。

「家はどこ??」

あんまり教えたくはないけど…渋々住所を伝える。

「おっ!偶然。割と俺と家近いじゃん。歩いて10分くらいの距離かな。」

「えっ?そうなの!?まさか近くに愁くんが住んでるなんて思ってもいなかったよ。」

なんだかんだ他愛のない話をして、あっという間に家に着いた。愁くんもここで降りてここから歩いて帰るみたい。

「お金払うよ!」

真っ先にお金を支払おうとする愁くんに私も払おうとお財布を出す。

「いいの、俺が払うから。」

ささっとスマートに払ってくれてタクシーを2人で出た。外の風が冷たくて気持ちいい。

「私もちゃんと働いてるから、お金半分払うよ。」

「じゃあさ、今回は俺が払うからその代わりお願い一つ聞いて欲しいんだよね。」

「え?なに?」

「明日も日曜で休みでしょ?体調良かったらお昼どっかのカフェでランチしようよ」

「えー……分かった」

「よっしゃ決まり!そしたら明日ここまで迎えにくるから。ライン入れるね。」

「うん。」

飲み屋の前でのお医者さんモードの愁くんを思い出すと正直怖いなって思ったけど、タクシーの中での何気ない会話をした時の愁くんは昔みたいにかっこよくて優しくて、明日のランチ行ってみることにした。

「体調は大丈夫?眠れそう?」

「うん。酔いも覚めてきたし、大丈夫。」

「そっか。じゃあまた明日。おやすみ」

「帰り気をつけてね。おやすみ」

そんなんで今日はお別れした。