胸の奥がキュンと切なくなるくらい、愛されている実感が湧いてしまうのも事実。
学校の校門が見えてくると、千影くんは名残惜しそうに私の手を少しだけ強く握り、それからゆっくりと離した。
学校内では一応、付き合っていることは秘密にしているからだ。
「亜子」
校門をくぐる直前、千影くんが小さな声で私を呼んだ。
「何?」
「テスト頑張って。終わったら、またご褒美あげるから」
「ご褒美って……まさか、またさっきみたいなの?」
「さぁね。楽しみにしといて」
悪戯っぽくウインクをして、千影くんは先に教室へと歩いて行ってしまった。
その後ろ姿を見送りながら、私は深くため息をつく。
ご褒美って言われたら……頑張るしかないじゃない。
完全に千影くんの手のひらの上で転がされている私。
過剰すぎる彼の甘えモードに、私の心臓がどこまで耐えられるか分からないけれど。
「よし、テスト、頑張ろう!」
私は両手で頬をパンと叩き、千影くんの後を追うように、教室への階段を駆け上がった。
End.

