千影くんの甘えモードが過剰につき。



大きくて、あたたかい手。


繋がれた瞬間、さっきまでの怒りのような照れが、すうっと溶けていくのが分かった。


結局、私も千影くんのことが大好きだから、強く拒めないのだ。



​「今日のテスト、亜子ちゃん、緊張してる?」



​千影くんが繋いだ手を軽く揺らしながら聞いてくる。



​「うん、すごく。特に数学が不安で……千影くんは余裕そうでいいな」



​千影くんは学年でも常にトップクラスの秀才だ。


朝あんなにぐだぐだしていても、勉強に関しては完璧なのだから憎らしい。



​「余裕じゃないよ。俺だって、亜子ちゃんが足りなくていつも緊張してる」


​「何それ、意味分かんない」


​「亜子ちゃん成分が足りないと、脳が働かないの。でも今日は朝からあんなに深い補給ができたから、100点取れる気がする」


​「も、もう! まだ言うの!?」



​千影くんはからかうように私の顔を覗き込んでは、嬉しそうに目を細める。


最近の千影くんは、本当に甘えモードが過剰だ。


付き合う前は、もっとクールで、私の後ろを黙ってついてくるようなタイプだったのに。


彼女になった途端、こんなに独占欲を全開にして、甘えてくるなんて聞いていない。



​でも――。