「む、無理だよ……!ほら、学校行かなきゃ!」
焦って逃げようとする私を、千影くんはさらにぎゅっと抱きしめ直した。
「してくれなきゃ、今日学校行けない……あと、亜子ちゃんも学校休ませちゃうから」
「え……」
千影くんの目は、本気だった。
嘘じゃない。この人は、私がキスするまで本当に私をここから帰さないつもりだ。
これは、難題です!
だって今日、テスト!
休むわけにはいかないよ!?
赤点なんか取ったら、居残りで千影くんと一緒に帰れなくなっちゃう。
それだけは絶対に阻止しなければならない。
私は真面目モードに突入した。
「千影くん……本当に、キスしたら起きてくれる?」
「うん。亜子からの特別なやつなら、一瞬でフル充電される」
真剣な顔でそんな甘いことを言う千影くんに、私の顔はきっと今、トマト並みに赤い。
でも、背に腹は変えられない。
テストのため。そして、大好きな彼氏のため……!
「……一回だけだからね」
私はぎゅっと目を瞑り、千影くんの唇に向けて、そっと自分の唇を重ねた。
ちゅ、と軽いリップ音。
すぐに離れようとしたけれど、千影くんの手が私の後頭部に回された。
「……んっ、……ちか、げくん……っ」
「……『長くて深いの』って言ったでしょ?」
離れるどころか、隙間を埋めるように深いキスが降ってくる。
千影くんの唇は驚くほど柔らかくて、熱い。
優しく、でも強引なキスに、私の身体から完全に力が抜けていく。
頭の中が真っ白になって、テストのことなんて、どこか遠くに吹き飛んでしまいそうだった。
どれくらい時間が経ったのだろう。
ようやく唇が離されたとき、私は千影くんの胸元を掴んだまま、ぜーぜーと息を切らしていた。

