千影くんの甘えモードが過剰につき。



​「えいっ、こちょこちょこちょー!」


​「……っう、わ! ちょ、亜子……っ!」



​狙いは見事に的中。


千影くんの身体がびくっと跳ねて、綺麗な切れ長の目が一気に開いた。


普段はクールでちょっと近寄りがたい雰囲気なのに、今は涙目で身悶えしている。


そのギャップがたまらなく可愛い。



​「あはは!やっと起きた!ほらほら、早く準備しないと本当に遅刻しちゃうよ?」



​勝ち誇った笑みを浮かべた私。


けれど、次の瞬間。



​「……捕まえた」


​「えっ……?」



​視界がぐわんと歪んだ。


気づいたときには、私の手首は千影くんの大きな手にしっかりと握られていて。


そのままベッドの上に引きずり込まれるようにして、私は千影くんの胸の中にすっぽりと収まってしまっていた。



​「わ、わわっ!? 千影くん!?」


​「朝から容赦ないなぁ、亜子ちゃんは……お仕置き、必要だよね」



​耳元で、低くて少しハスキーな声が響く。


寝起き特有のその声に、心臓がトクンと大きく跳ねた。


千影くんの長い腕が私の腰に回され、身動きが取れなくなる。


柔軟剤だと思う爽やかな香りと、千影くん自身の体温が混ざり合った匂いが鼻腔をくすぐって、頭がどうにかなりそう。