恋愛偏差値0.01。ー恋愛初心者溺愛されますー【完】

こめかみの傷——
小学生の時に石を投げられて、ついた傷。
「石投げられて顔に当たったとか?」
頭がぎゅっと締め付けられる。
「血がたくさん出て、相手の男の子は逃げた?」
そうだ。
血がたくさん出て、相手の男の子は逃げた。
私は、小さく頷いた。
「……やっと会えた」
「……え?」
「……その男の子は、ずっと君に謝りたかったんだ」
頭を石で殴られたような痛みが走る。
「……あの時は、まだ子供だったから好きな子を虐めたかったわけ」
颯さんはそう言って、私の耳に眼鏡を掛けた。
凪くんの手が伸びて来て、私を引き寄せる。
「もう、いいですか?」
颯さんは深い溜め息を吐いた。
「毎回、毎回。邪魔する」
凪くんは返事をすることもなく、私の手を引っ張り歩き始めた。
凪くんの空気も、颯さんの目付きも怖い。
周りの男達が出口を塞いで、凪くんは溜め息をついた。
「ごめん、美月。ちょっと待ってられる?」
「……でも」
「怖かったら目を閉じていて」
凪くんがそう言っている、その後から一人の男が殴りかかろうとしている。
危ない——
口を開いた瞬間だった。
凪くんの姿が視界から消えたかと思ったら、しゃがみ込み足を払う。
男は体勢を崩し、その場に尻もちをついた。
「えっと、帰してくれる気はない?」
男が立ち上がろうとした瞬間、凪くんの足が跳ね上がった。
男が反射的に顔を庇う。
「……まだやる?」
凪くんは静かに足を下ろした。
出口にいる二人が顔を見合わせている。
尻もちをついていた男が勢い良く立ち上がり、凪くんに向かって走っていく。
凪くんは身体をねじったかと思うと、男の拳を避けた。
そのまま足を振り上げる。
男の身体が吹き飛んだ。
二人の男は顔を見合わせ、道を開ける。
凪くんは私の手を掴むと、歩き始めた。