第五十五話:数式の終わり、そして至宝の完全なる降伏(エルサ・ゼオン・カイル視点)
【エルサ視点】不条理の答え、あるいは満たされた心
ガルディニアの王宮にきてから、毎日、毎時間、毎秒。
ゼオン様の重すぎるほどの独占欲と、国王陛下、王妃殿下、そしてカイル様や侍女たち全員から浴びせられ続けた『理由なき善意』。それらは、前世と今世を通じて一度も親から愛されず、ただ磨り潰されるだけの道具だった私の心に、絶え間なく注がれる温かい雨のようでした。
「……やっと、分かりましたわ」
ある穏やかな午後のこと。私は離宮のソファで、隣に座るゼオン様の胸に自らぽすんと頭を預け、小さく呟きました。
「お前がそうやって自ら寄ってくるなんて、明日は天変地異でも起きるのか?」
驚いたように目を見開いたゼオン様が、けれど嬉しさを隠せないといった様子で、私の腰をすぐに強い腕で引き寄せます。私はその温もりに完全に身を委ねながら、これまでずっと私の頭脳を支配していた「恐怖の計算式」を、自らの手で消去(デリート)していくのを感じていました。
「いいえ。私の大人の頭脳が、ついに『降伏』を認めたのです。いくら私が『役に立たなければ捨てられる』と怯えてデータを揃えても、皆様はそれ以上の『絶対的な溺愛』で私の想定をことごとく破壊してこられました。……無条件の愛というものは、論理的に解き明かすものではなく、ただこうして、ただいま感じているように……温かく、身を委ねるものなのだと、ようやく完全に理解いたしました」
前世の孤独も、ベルトラン公爵家での冷酷な搾取も、もう私の心を縛ることはありません。
愛し方も甘え方も知らなかった真っ白な少女の心は、今、この国すべての人間の愛によって、鮮やかな幸福の色で完全に満たされたのです。
「ゼオン様……。私を、見つけて、愛してくださって……本当にありがとうございます。私、今……とっても、幸せです……っ」
私が少し涙を潤ませながら、けれど今度は一点の曇りもない最高の笑顔を向けると、ゼオン様は一瞬息を呑み、それから壊れ物を扱うように、けれど狂おしいほどの情熱を込めて、私の唇を深く、深く塞いできました。
【ゼオン視点】至宝の覚醒、俺の腕の中という楽園で
「……ん、ぅ……、ゼオン、様……っ」
何度も、何度も、その柔らかく甘い唇を貪る。エルサはもう、以前のように怯えて身を硬くすることもなく、俺の首に細い両腕を回し、健気に、そして反則的なまでに愛らしく俺のキスに応えてきた。
(ーーああ、やっと、本当に俺のものになったな)
前世と今世、合わせて四十年間、誰の愛も知らずに凍りついていた純白の至宝。
そのエルサが、今、俺の注ぎ続けた絶対的な溺愛を完全に受け止め、俺の胸の中で世界一幸せそうに笑っている。男として、これ以上の極上の達成感と、狂おしいほどの愛おしさは存在しない。
「エルサ。お前がその最高の笑顔を俺にくれるなら、俺はこの世界のすべてをお前の足元に捧げてやる。もう二度と、お前をあの冷たい日陰へなんて戻さない」
「ふふ、またそのように、過剰な投資を……。でも、もうお小言は言いません。私も、貴方の傍にずっといたいのですから」
はにかむエルサをこれ以上ないほど強く抱きしめながら、俺は底なしの独占欲を確固たる勝利のなかで満たしていた。お前を縛る冷たい数式はもう終わった。これから始まるのは、俺の腕の中という楽園での、終わらない春の日々だけだ。
【カイル視点】純白の頁に刻まれた、永遠の証明書
「……お見事です、エルサ様。これにて、我が国の『至宝完全救済計画』は、これ以上ない完璧な成功を収めましたね」
私室の扉の外で、私は眼鏡のブリッジを押し上げ、かつてないほどに深く、そして満ち足りた微笑みを浮かべていました。
部屋の奥から聞こえてくる、エルサ様の心からの楽しそうな笑い声。
私たちが張り巡らせた過保護な包囲網は、ついにその凍てついた心を完全に溶かし、彼女に「無条件に愛される資格」を受け止めさせたのです。
「カイル…! エルサが、ついにゼオンに自ら甘えたわ……っ!」
私の隣では、壁に耳を当てていた侍女長マルタや厨房のクロエ、そしていつの間にか本宮から駆けつけていたエレオノーラ王妃様までが、一斉に涙の洪水を流してハンカチを握り締めていました。
「ええ、王妃様。エルサ様の空白だった純白の頁には、今、殿下と皆様の愛によって、世界で一番甘やかな『幸福の証明書』が刻まれました」
愛を知らなかった異邦の天才は、今、ガルディニアの絶対の理のなかで、世界一我が儘で、世界一愛される本物の姫君へと覚醒を遂げた。
彼女を囲む過保護な甘雨は、これからも止むことなく、彼女の歩む未来を永遠に、色鮮やかな祝福の色彩で満たし続けるのです。
【エルサ視点】不条理の答え、あるいは満たされた心
ガルディニアの王宮にきてから、毎日、毎時間、毎秒。
ゼオン様の重すぎるほどの独占欲と、国王陛下、王妃殿下、そしてカイル様や侍女たち全員から浴びせられ続けた『理由なき善意』。それらは、前世と今世を通じて一度も親から愛されず、ただ磨り潰されるだけの道具だった私の心に、絶え間なく注がれる温かい雨のようでした。
「……やっと、分かりましたわ」
ある穏やかな午後のこと。私は離宮のソファで、隣に座るゼオン様の胸に自らぽすんと頭を預け、小さく呟きました。
「お前がそうやって自ら寄ってくるなんて、明日は天変地異でも起きるのか?」
驚いたように目を見開いたゼオン様が、けれど嬉しさを隠せないといった様子で、私の腰をすぐに強い腕で引き寄せます。私はその温もりに完全に身を委ねながら、これまでずっと私の頭脳を支配していた「恐怖の計算式」を、自らの手で消去(デリート)していくのを感じていました。
「いいえ。私の大人の頭脳が、ついに『降伏』を認めたのです。いくら私が『役に立たなければ捨てられる』と怯えてデータを揃えても、皆様はそれ以上の『絶対的な溺愛』で私の想定をことごとく破壊してこられました。……無条件の愛というものは、論理的に解き明かすものではなく、ただこうして、ただいま感じているように……温かく、身を委ねるものなのだと、ようやく完全に理解いたしました」
前世の孤独も、ベルトラン公爵家での冷酷な搾取も、もう私の心を縛ることはありません。
愛し方も甘え方も知らなかった真っ白な少女の心は、今、この国すべての人間の愛によって、鮮やかな幸福の色で完全に満たされたのです。
「ゼオン様……。私を、見つけて、愛してくださって……本当にありがとうございます。私、今……とっても、幸せです……っ」
私が少し涙を潤ませながら、けれど今度は一点の曇りもない最高の笑顔を向けると、ゼオン様は一瞬息を呑み、それから壊れ物を扱うように、けれど狂おしいほどの情熱を込めて、私の唇を深く、深く塞いできました。
【ゼオン視点】至宝の覚醒、俺の腕の中という楽園で
「……ん、ぅ……、ゼオン、様……っ」
何度も、何度も、その柔らかく甘い唇を貪る。エルサはもう、以前のように怯えて身を硬くすることもなく、俺の首に細い両腕を回し、健気に、そして反則的なまでに愛らしく俺のキスに応えてきた。
(ーーああ、やっと、本当に俺のものになったな)
前世と今世、合わせて四十年間、誰の愛も知らずに凍りついていた純白の至宝。
そのエルサが、今、俺の注ぎ続けた絶対的な溺愛を完全に受け止め、俺の胸の中で世界一幸せそうに笑っている。男として、これ以上の極上の達成感と、狂おしいほどの愛おしさは存在しない。
「エルサ。お前がその最高の笑顔を俺にくれるなら、俺はこの世界のすべてをお前の足元に捧げてやる。もう二度と、お前をあの冷たい日陰へなんて戻さない」
「ふふ、またそのように、過剰な投資を……。でも、もうお小言は言いません。私も、貴方の傍にずっといたいのですから」
はにかむエルサをこれ以上ないほど強く抱きしめながら、俺は底なしの独占欲を確固たる勝利のなかで満たしていた。お前を縛る冷たい数式はもう終わった。これから始まるのは、俺の腕の中という楽園での、終わらない春の日々だけだ。
【カイル視点】純白の頁に刻まれた、永遠の証明書
「……お見事です、エルサ様。これにて、我が国の『至宝完全救済計画』は、これ以上ない完璧な成功を収めましたね」
私室の扉の外で、私は眼鏡のブリッジを押し上げ、かつてないほどに深く、そして満ち足りた微笑みを浮かべていました。
部屋の奥から聞こえてくる、エルサ様の心からの楽しそうな笑い声。
私たちが張り巡らせた過保護な包囲網は、ついにその凍てついた心を完全に溶かし、彼女に「無条件に愛される資格」を受け止めさせたのです。
「カイル…! エルサが、ついにゼオンに自ら甘えたわ……っ!」
私の隣では、壁に耳を当てていた侍女長マルタや厨房のクロエ、そしていつの間にか本宮から駆けつけていたエレオノーラ王妃様までが、一斉に涙の洪水を流してハンカチを握り締めていました。
「ええ、王妃様。エルサ様の空白だった純白の頁には、今、殿下と皆様の愛によって、世界で一番甘やかな『幸福の証明書』が刻まれました」
愛を知らなかった異邦の天才は、今、ガルディニアの絶対の理のなかで、世界一我が儘で、世界一愛される本物の姫君へと覚醒を遂げた。
彼女を囲む過保護な甘雨は、これからも止むことなく、彼女の歩む未来を永遠に、色鮮やかな祝福の色彩で満たし続けるのです。



