【エリーゼ視点】
「おかーしゃん…あのね、あのね!」
アルスとルカが私の袖を引っ張って、部屋の隅へ連れて行こうとする。最近の二人は、何かにつけて二人だけでこそこそと耳打ちをすることが多い。
今日の二人は、いつも以上に興奮していて、銀色の耳が小刻みに震えている。
「なあに? 内緒のお話?」
「しーっ! おかーしゃん、内緒だよ! ボクたちね、おとーしゃんに『かっこいいえ』をあげるの!」
アルスが目を輝かせて告げた。どうやら、強くてかっこいいレオンに、自分たちで絵を描いてプレゼントしたいらしい。
二歳になったとはいえ、まだ手先はたどたどしい。でも、一生懸命にレオンの姿を描こうとしている姿を想像すると、胸が温かくなる。
「まあ、素敵! レオン、きっとすごく喜ぶわよ」
「だからね、おかーしゃん。おとーしゃんが、しゅぎょうにいってるあいだに、おてつだい、して?」
ルカが上目遣いでお願いしてくる。断れるはずがない。私は二人の小さな画伯のために、集落の職人から譲り受けた質の良い羊皮紙と、ベリーの果汁で作った色鮮やかな絵の具を用意した。
「あー! ぼくの『かっこいいおとーしゃん』はね、ここにおはながあってね!」
「ちがうもん! おとーしゃんは、おっきい剣をね、もっとびゅいーんってしてるの!」
羊皮紙を広げると、二人は早速、ベリーの果汁で指を赤く染めながら大騒ぎだ。
アルスはダイナミックに剣を描こうとして、羊皮紙の外まで線がはみ出しているし、ルカは「おとーしゃんとおかーしゃんとボクたち!」と言って、家族四人の姿を円の中に詰め込もうと奮闘している。
指先は色だらけ。服もすっかり絵の具まみれ。
でも、その真剣な眼差しは、父であるレオンに少し似て、獲物を狙う狩人のような鋭さを帯びている。
「アルス、そこはレオンのたてがみのつもり?」
「うん! これね、つよそうなの! おとーしゃん、もっとつよいもん!」
二人の「大好き」が、少しずつ形になっていく。
レオンが不在の短い時間、二人は汗をかき、顔に絵の具を塗りつけながら、自分たちの持てる全ての愛情を絵に注ぎ込んでいた。
絵が完成した頃には、アルスもルカも、まるで泥遊びをした後のような姿になっていた。
でも、その顔は達成感で輝いている。
「……おかーしゃん…おとーしゃん、もどってくる?」
「ええ、もうすぐ戻ってくるわよ」
二人は完成した羊皮紙を大切そうに抱え、レオンが帰宅するのを今か今かと待ちわびている。
レオンは、自分に向けられたこの無垢なサプライズに気づいたら、どんな顔をするだろう。
あの強面で、普段はクールな銀狼の騎士が、子供たちの不器用な絵を見て、目尻を下げてデレデレになる姿が目に浮かぶようだ。
(レオン、覚悟していてね。あなたを愛してやまない小さな騎士たちが、今、とっておきの贈り物を用意しているわ)
二人の小さな手が描いた、世界で一番温かい「強くてかっこいいお父さん」。
それは、どんな宝石よりも価値のある、家族の宝物になるはずだ。
私は二人の絵の具だらけの頬を優しく拭いながら、愛しい夫の帰りを一緒に待つことにした。
「おかーしゃん…あのね、あのね!」
アルスとルカが私の袖を引っ張って、部屋の隅へ連れて行こうとする。最近の二人は、何かにつけて二人だけでこそこそと耳打ちをすることが多い。
今日の二人は、いつも以上に興奮していて、銀色の耳が小刻みに震えている。
「なあに? 内緒のお話?」
「しーっ! おかーしゃん、内緒だよ! ボクたちね、おとーしゃんに『かっこいいえ』をあげるの!」
アルスが目を輝かせて告げた。どうやら、強くてかっこいいレオンに、自分たちで絵を描いてプレゼントしたいらしい。
二歳になったとはいえ、まだ手先はたどたどしい。でも、一生懸命にレオンの姿を描こうとしている姿を想像すると、胸が温かくなる。
「まあ、素敵! レオン、きっとすごく喜ぶわよ」
「だからね、おかーしゃん。おとーしゃんが、しゅぎょうにいってるあいだに、おてつだい、して?」
ルカが上目遣いでお願いしてくる。断れるはずがない。私は二人の小さな画伯のために、集落の職人から譲り受けた質の良い羊皮紙と、ベリーの果汁で作った色鮮やかな絵の具を用意した。
「あー! ぼくの『かっこいいおとーしゃん』はね、ここにおはながあってね!」
「ちがうもん! おとーしゃんは、おっきい剣をね、もっとびゅいーんってしてるの!」
羊皮紙を広げると、二人は早速、ベリーの果汁で指を赤く染めながら大騒ぎだ。
アルスはダイナミックに剣を描こうとして、羊皮紙の外まで線がはみ出しているし、ルカは「おとーしゃんとおかーしゃんとボクたち!」と言って、家族四人の姿を円の中に詰め込もうと奮闘している。
指先は色だらけ。服もすっかり絵の具まみれ。
でも、その真剣な眼差しは、父であるレオンに少し似て、獲物を狙う狩人のような鋭さを帯びている。
「アルス、そこはレオンのたてがみのつもり?」
「うん! これね、つよそうなの! おとーしゃん、もっとつよいもん!」
二人の「大好き」が、少しずつ形になっていく。
レオンが不在の短い時間、二人は汗をかき、顔に絵の具を塗りつけながら、自分たちの持てる全ての愛情を絵に注ぎ込んでいた。
絵が完成した頃には、アルスもルカも、まるで泥遊びをした後のような姿になっていた。
でも、その顔は達成感で輝いている。
「……おかーしゃん…おとーしゃん、もどってくる?」
「ええ、もうすぐ戻ってくるわよ」
二人は完成した羊皮紙を大切そうに抱え、レオンが帰宅するのを今か今かと待ちわびている。
レオンは、自分に向けられたこの無垢なサプライズに気づいたら、どんな顔をするだろう。
あの強面で、普段はクールな銀狼の騎士が、子供たちの不器用な絵を見て、目尻を下げてデレデレになる姿が目に浮かぶようだ。
(レオン、覚悟していてね。あなたを愛してやまない小さな騎士たちが、今、とっておきの贈り物を用意しているわ)
二人の小さな手が描いた、世界で一番温かい「強くてかっこいいお父さん」。
それは、どんな宝石よりも価値のある、家族の宝物になるはずだ。
私は二人の絵の具だらけの頬を優しく拭いながら、愛しい夫の帰りを一緒に待つことにした。



