銀狼騎士は転生悪役令嬢と番になる運命でした

【レオン視点】
平和な時間は、あまりにも唐突に破られた。
俺がエリーゼと森で薬草を採取していると、集落の門番を務めるガイルが、険しい顔で俺たちの元へ駆けてきた。
「おい、レオン! ……王国の方から、変な使者が来やがった」
「使者だと? 公爵家か?」
「いや、それよりももっと厄介な……『王室』の紋章をつけた連中だ。エリーゼを王家直属の魔術師が探しに来ているらしい」
俺の耳が、警告音のようにピクリと跳ね上がった。
王室。ヴァルハイト公爵家など比較にならない、国そのものの権力だ。あいつらは、エリーゼの持つ規格外の『聖属性の魔力』を、ただの薬草作りの道具としてではなく、国家を支配するための軍事力として利用しようと目論んでいるに違いない。
俺は隣で顔を青くしたエリーゼの手を、強く、強く握りしめた。
「怖がるな、エリーゼ」
「レオン……私、どこかに閉じ込められちゃうの?」
彼女の潤んだ瞳を見て、俺の心に再び、狂おしいほどの独占欲と怒りが湧き上がる。
「そんなことはさせない。……俺の番を奪える奴がいるなら、神だろうが王だろうが、俺の銀色の牙で切り裂いてやる」
俺はエリーゼを背中に庇い、集落の入り口へと歩き出した。
王国の使者ごときが、このガルハラの聖域を汚すことは許さない。
愛しい彼女と、俺たちの自由な未来を守るため。銀狼の騎士は、再びその牙を剥き出しにする時を迎えていた。

「……我が集落の土を踏むなと言ったはずだ、人間の王室の犬ども」
集落の門の前に立ちふさがる俺の声は、すでに人間の言葉の範疇を超えていた。
目の前には、白銀のローブを纏った王室魔術師たちが五人。彼らの背後には、武装した精鋭騎士団が展開している。
「獣人よ。我々は『聖女の再来』と呼ばれるその女を連れ戻しに来た。貴様らのような蛮族に、国家の駒を管理する資格はない」
魔術師の傲慢な言葉に、俺の理性がプツリと音を立てて切れた。
その瞬間、俺の身体が銀の光を纏って膨張し、人間離れした鋭い爪と牙が剥き出しになる。
「――グォォォォォォォォォォッ!!」
魂を震わせる、本物の『銀狼』の咆哮。
それはただの威嚇ではない。周囲の空気を振動させ、彼らの魔力回路を直接断ち切るほどの、獣の王の呪縛にも等しい震源だった。精鋭騎士たちが一斉に膝をつき、魔術師たちすら顔を青ざめて耳を押さえる。
「俺の番に指一本触れさせるか。……神だろうが王だろうが、俺の銀の牙でその喉元を噛み砕いてやる!」
俺は一気に地を蹴り、光速の残像を残して先頭の魔術師へと肉薄した。
殺意を隠すつもりなどない。俺が求めているのは、我が番が二度と自由を奪われないための、徹底的な排除だ。