【レオン視点】
「天空都市ハルシオン、か」
エリーゼが楽しそうに荷物をまとめる姿を、俺は椅子に腰掛け、大剣の手入れをしながら見つめていた。
彼女が望むなら、世界の果てだろうが、天の頂だろうが連れて行く。それが俺の誓いだ。
だが、あの傲慢な公爵家の兄が、このまま大人しく引き下がるとは思えない。リベルタを出れば、王国の法が及ばない代わりに、力無き平民は容易に野盗や魔獣の餌食になる無法の荒野が待っている。
「レオン、次の街への移動中に、私に『護身用の戦い方』を教えてくれないかしら?」
不意に、エリーゼが真剣な顔で俺を振り返った。
「戦い方? お前にはあの並外れた回復魔法と、調剤の知識がある。危険な時は、俺の後ろに隠れていればいい」
「ダメよ」
エリーゼは首を横に振った。
「いつまでも守られているだけのお姫様じゃ、またあの『白い天井』の時に逆戻りだわ。私は、あなたの脚にただ乗せてもらうだけの存在になりたくないの。あなたの隣を、自分の足で、並んで歩きたいのよ」
真っ直ぐな、強い光を宿した琥珀色の瞳だった。
彼女は、俺をただの「便利な護衛」として依存する気はないのだ。対等な相棒として、自分の人生の責任を自分で背負おうとしている。
その気高さが、俺の胸の奥の熱をさらに激しく煽る。
「……分かった。お前がそこまでの覚悟を見せるなら、俺の知る『牙の研ぎ方』を教えよう。お前の持つ膨大な魔力を、医療だけでなく、身を守るための『障壁』や『光の弾丸』に転換する術だ」
俺は立ち上がり、彼女の前に歩み寄ると、その小さな頭にそっと手を置いた。
「だが、厳しく教えるぞ。俺の可愛い弟子になる覚悟はあるか?」
「ええ、望むところよ。レオン先生」
エリーゼは悪戯っぽく微笑み、俺の手のひらに自分の頭をすり寄せるようにした。その無防備な愛らしさに、俺の理性はまたしてもギリギリのところで踏みとどまる。
焦るな、と自分に言い聞かせる。
次の目的地である天空都市への旅路は長い。道中、彼女に戦い方を教え、共に危機を乗り越え、少しずつ、ゆっくりと、彼女の中に俺という「男」の存在を刻み込んでいけばいい。
「よし。明日の朝一番でリベルタを発つ。……行くぞ、エリーゼ。俺たちの、新しい旅へ」
「ええ、行きましょう!」
翌朝、リベルタの街に別れを告げ、私たちは再び馬車を走らせる。
見上げる空の先、雲の向こうにある輝かしい未来を目指して、私たちの物語はゆっくりと、けれど確実に、より深い絆へと向かって動き出していた。
「天空都市ハルシオン、か」
エリーゼが楽しそうに荷物をまとめる姿を、俺は椅子に腰掛け、大剣の手入れをしながら見つめていた。
彼女が望むなら、世界の果てだろうが、天の頂だろうが連れて行く。それが俺の誓いだ。
だが、あの傲慢な公爵家の兄が、このまま大人しく引き下がるとは思えない。リベルタを出れば、王国の法が及ばない代わりに、力無き平民は容易に野盗や魔獣の餌食になる無法の荒野が待っている。
「レオン、次の街への移動中に、私に『護身用の戦い方』を教えてくれないかしら?」
不意に、エリーゼが真剣な顔で俺を振り返った。
「戦い方? お前にはあの並外れた回復魔法と、調剤の知識がある。危険な時は、俺の後ろに隠れていればいい」
「ダメよ」
エリーゼは首を横に振った。
「いつまでも守られているだけのお姫様じゃ、またあの『白い天井』の時に逆戻りだわ。私は、あなたの脚にただ乗せてもらうだけの存在になりたくないの。あなたの隣を、自分の足で、並んで歩きたいのよ」
真っ直ぐな、強い光を宿した琥珀色の瞳だった。
彼女は、俺をただの「便利な護衛」として依存する気はないのだ。対等な相棒として、自分の人生の責任を自分で背負おうとしている。
その気高さが、俺の胸の奥の熱をさらに激しく煽る。
「……分かった。お前がそこまでの覚悟を見せるなら、俺の知る『牙の研ぎ方』を教えよう。お前の持つ膨大な魔力を、医療だけでなく、身を守るための『障壁』や『光の弾丸』に転換する術だ」
俺は立ち上がり、彼女の前に歩み寄ると、その小さな頭にそっと手を置いた。
「だが、厳しく教えるぞ。俺の可愛い弟子になる覚悟はあるか?」
「ええ、望むところよ。レオン先生」
エリーゼは悪戯っぽく微笑み、俺の手のひらに自分の頭をすり寄せるようにした。その無防備な愛らしさに、俺の理性はまたしてもギリギリのところで踏みとどまる。
焦るな、と自分に言い聞かせる。
次の目的地である天空都市への旅路は長い。道中、彼女に戦い方を教え、共に危機を乗り越え、少しずつ、ゆっくりと、彼女の中に俺という「男」の存在を刻み込んでいけばいい。
「よし。明日の朝一番でリベルタを発つ。……行くぞ、エリーゼ。俺たちの、新しい旅へ」
「ええ、行きましょう!」
翌朝、リベルタの街に別れを告げ、私たちは再び馬車を走らせる。
見上げる空の先、雲の向こうにある輝かしい未来を目指して、私たちの物語はゆっくりと、けれど確実に、より深い絆へと向かって動き出していた。


