銀狼騎士は転生悪役令嬢と番になる運命でした

【エリーゼ視点】
食堂を出ると、夜風が火照った身体に心地よかった。
私は少し足元がふらついていたけれど、レオンが私の腰にそっと手を添えて、支えるように歩いてくれている。
「ごめんなさい、レオン。私、お酒に強くなった気でいたけれど、全然ダメだったわ」
「気にするな。お前の初めての泥酔に付き合えたのは、護衛として光栄だ」
レオンは少しからかうように微笑んだ。その優しさに甘えたくなって、私は彼の大きな上着の袖を掴んでいた手を下に滑らせ、彼の「手のひら」に自分の指をそっと絡ませた。
「……エリーゼ?」
「服の袖じゃなくて、手を繋ぎたいの。……ダメ?」
上を向いてレオンを見つめると、彼は一瞬だけ息を呑むような気配を見せた後、私の小さな手を、指と指を複雑に交差させる『恋人繋ぎ』で、ぎゅっと強く握りしめた。
ゴツゴツとした、男らしい大きな手。
けれど、驚くほど優しく、私を決して離さないという強い意志がその力加減から伝わってくる。
「ダメなわけがないだろう」
レオンは前を向いたまま、少しぶっきらぼうに言った。けれど、彼の銀色の耳の先が、月光に照らされて赤くなっているのを、私はしっかりと見ていた。
前世の私は、誰の手も握れず、誰の温もりも知らずに、一人で冷たいベッドの上で消えていった。
でも、今の私には、こんなにも愛おしくて、私のすべてを守ってくれる人が隣にいる。
まだ、お互いに「好き」という決定的な言葉は口にしていない。
私たちは、お互いが背負ってきた過去の痛みの深さを知っているからこそ、この関係を壊さないように、ゆっくり、ゆっくりと育んでいる。
けれど、この繋いだ手の強さは、どんな言葉よりも雄弁に、私たちの未来を示しているような気がした。
「レオン、明日も、明後日も……ずっと一緒にいてね」
「あえ。お前が望む限り、世界の果てまで」
静かなリベルタの夜道を、私たちは一歩ずつ、確かな足跡を刻みながら、寄り添って歩いていく。