数日後、体調が回復した私は、公爵家のサロンで婚約者であるジュリアン王子と対面していた。
金髪碧眼の、いかにも「王子様」といった容姿。しかしその瞳には、私への明らかな嫌悪と軽蔑が宿っている。
「気分はどうか、エリーゼ。君の不注意な落馬のせいで、王室のスケジュールがどれだけ狂ったか分かっているのか?」
開口一番、心配の言葉すらなく責め立てる婚約者。
前世の私なら「体調を崩すのは本人のせいじゃない!」と怒鳴り散らしていたところだが、今の私は心の中でガッツポーズをしていた。よしよし、順調に嫌われている。
「申し訳ございません、ジュリアン殿下。すべては私の不徳の致すところ。殿下にご迷惑をおかけしたこと、深く反省しております」
殊勝に頭を下げると、ジュリアンは意外そうな顔をして眉をひそめた。いつもなら「殿下がエスコートを怠るからですわ!」と金切り声をあげるはずのエリーゼが、あっさりと非を認めたからだ。
「……ふん。反省しているなら良い。しばらくは大人しく謹慎していろ。それと、近々我が王宮に『聖なる力』を持つ娘が保護されることになった。君のような気性の激しい女とは違う、慎み深い娘だ。会う機会があっても、決して不敬を働くなよ」
(あ、もう聖女ヒロインが登場してる段階なんだ)
私は内心でスケジュール帳にバツ印をつけるように納得した。
「かしこまりました。殿下のお気に入りの方に、私が関わるような真似は決していたしませんわ」
「お気に入りだと? 変な勘繰りはやめろ! ……チッ、不愉快な」
ジュリアンは吐き捨てるように言うと、紅茶にも手をつけずに席を立った。
見送りすら不要と言わんばかりに去っていく彼の背中を見ながら、私は冷めかけた紅茶を優雅に口に運ぶ。
「うん、不味い。……よし、逃亡資金と移住先の選定を始めよう」
金髪碧眼の、いかにも「王子様」といった容姿。しかしその瞳には、私への明らかな嫌悪と軽蔑が宿っている。
「気分はどうか、エリーゼ。君の不注意な落馬のせいで、王室のスケジュールがどれだけ狂ったか分かっているのか?」
開口一番、心配の言葉すらなく責め立てる婚約者。
前世の私なら「体調を崩すのは本人のせいじゃない!」と怒鳴り散らしていたところだが、今の私は心の中でガッツポーズをしていた。よしよし、順調に嫌われている。
「申し訳ございません、ジュリアン殿下。すべては私の不徳の致すところ。殿下にご迷惑をおかけしたこと、深く反省しております」
殊勝に頭を下げると、ジュリアンは意外そうな顔をして眉をひそめた。いつもなら「殿下がエスコートを怠るからですわ!」と金切り声をあげるはずのエリーゼが、あっさりと非を認めたからだ。
「……ふん。反省しているなら良い。しばらくは大人しく謹慎していろ。それと、近々我が王宮に『聖なる力』を持つ娘が保護されることになった。君のような気性の激しい女とは違う、慎み深い娘だ。会う機会があっても、決して不敬を働くなよ」
(あ、もう聖女ヒロインが登場してる段階なんだ)
私は内心でスケジュール帳にバツ印をつけるように納得した。
「かしこまりました。殿下のお気に入りの方に、私が関わるような真似は決していたしませんわ」
「お気に入りだと? 変な勘繰りはやめろ! ……チッ、不愉快な」
ジュリアンは吐き捨てるように言うと、紅茶にも手をつけずに席を立った。
見送りすら不要と言わんばかりに去っていく彼の背中を見ながら、私は冷めかけた紅茶を優雅に口に運ぶ。
「うん、不味い。……よし、逃亡資金と移住先の選定を始めよう」


