【エリーゼ視点】
「専属調剤師」としての生活が始まって一週間。私の日常は、前世の闘病生活が嘘のように充実していた。
毎朝、ギルドから指定された薬草を仕入れるために、私はレオンを伴って朝市へ出かけるのが日課になっている。
「あ、レオン! 見て、今日のルミナス草、すごく瑞々しいわ。これならきっと、質の良い傷薬が作れる!」
「ああ。だがエリーゼ、あまり身を乗り出すな。その籠は俺が持つ」
レオンは私が手を伸ばした重い薬草の籠を、当然のようにひょいと片手で持ち上げた。彼の鍛え上げられた腕の筋肉が、衣服越しにも微かに躍動するのが見えて、私はまたしても胸の奥がドギマギとしてしまう。
彼が隣にいることに、ようやく少しずつ慣れてきた。けれど、こうして不意に見せられる「男らしさ」には、私の心臓はいつまで経っても過剰に反応してしまうのだ。
「ありが、とう。レオンは本当に頼りになるわね」
「……護衛だからな。このくらいは当然だ」
レオンはふいっと耳を背けたが、銀色の毛並みの隙間から覗く耳の先端が、ほんのりと赤くなっているのを私は見逃さなかった。
そんな彼の様子に、私の口元が自然と綻ぶ。ゆっくりでいい。こうしてお互いを意識しながら過ごす何気ない時間が、今の私にとって何よりの宝物だった。
しかし、そんな穏やかな時間を切り裂くように、市場の入り口の方がにわかに騒がしくなった。
「おい、どけ! 王国からの『特使』のお通りだ!」
格式張った甲冑に身を包んだ騎士たちが、平民たちを乱暴に押し除けながら進んでくる。その中央に掲げられている紋章を見た瞬間、私の心臓はドサリと嫌な音を立てて冷たくなった。
(――ヴァルハイト公爵家の、家紋……!?)
なぜ、この自由都市に。まさか、私を連れ戻しにきたの……?
前世の記憶と、今世のトラウマが混ざり合い、私の身体が反射的に小さく震えた。
「専属調剤師」としての生活が始まって一週間。私の日常は、前世の闘病生活が嘘のように充実していた。
毎朝、ギルドから指定された薬草を仕入れるために、私はレオンを伴って朝市へ出かけるのが日課になっている。
「あ、レオン! 見て、今日のルミナス草、すごく瑞々しいわ。これならきっと、質の良い傷薬が作れる!」
「ああ。だがエリーゼ、あまり身を乗り出すな。その籠は俺が持つ」
レオンは私が手を伸ばした重い薬草の籠を、当然のようにひょいと片手で持ち上げた。彼の鍛え上げられた腕の筋肉が、衣服越しにも微かに躍動するのが見えて、私はまたしても胸の奥がドギマギとしてしまう。
彼が隣にいることに、ようやく少しずつ慣れてきた。けれど、こうして不意に見せられる「男らしさ」には、私の心臓はいつまで経っても過剰に反応してしまうのだ。
「ありが、とう。レオンは本当に頼りになるわね」
「……護衛だからな。このくらいは当然だ」
レオンはふいっと耳を背けたが、銀色の毛並みの隙間から覗く耳の先端が、ほんのりと赤くなっているのを私は見逃さなかった。
そんな彼の様子に、私の口元が自然と綻ぶ。ゆっくりでいい。こうしてお互いを意識しながら過ごす何気ない時間が、今の私にとって何よりの宝物だった。
しかし、そんな穏やかな時間を切り裂くように、市場の入り口の方がにわかに騒がしくなった。
「おい、どけ! 王国からの『特使』のお通りだ!」
格式張った甲冑に身を包んだ騎士たちが、平民たちを乱暴に押し除けながら進んでくる。その中央に掲げられている紋章を見た瞬間、私の心臓はドサリと嫌な音を立てて冷たくなった。
(――ヴァルハイト公爵家の、家紋……!?)
なぜ、この自由都市に。まさか、私を連れ戻しにきたの……?
前世の記憶と、今世のトラウマが混ざり合い、私の身体が反射的に小さく震えた。


