【レオン視点】
商業ギルドの建物は、街の中心部にある活気あふれる石造りの巨頭だった。
一歩中に入ると、無数の商人が行き交い、様々な依頼や取引の書類が飛び交う、独特の熱気に満ちていた。
「す、凄い熱気ね……」
エリーゼが少し気圧されたように、俺の背中の後ろに隠れる。
その途端、周囲の男たちの視線が、一斉にエリーゼへと注がれた。
平民の服を着て、泥を落としたとはいえ、彼女が纏う気品と美しさは隠しきれるものではない。特に、白く細い首筋や、柔らかそうな手首が露出しているのが、男たちの下卑た好奇心を刺激しているのが分かった。
「ちっ……」
俺はわざと低く唸り声を上げ、エリーゼを背後に完全に隠すように一歩前に出た。
獣人の気配、それも元帝国精鋭騎士としての殺気を一瞬だけ解放する。大剣の柄に手をかければ、周囲の有象無象の男たちは、怯えたように一斉に視線を逸らした。
「レオン……?」
「何でもない。……エリーゼ、俺から離れるなよ」
「うん。……あ、あそこの窓口が『新規登録』みたい!」
エリーゼは俺の殺気に気づく様子もなく、受付の窓口へと進んでいった。本当に、こういうところは無防備というか、おっとりしている。
窓口の受付嬢は、エリーゼの丁寧な物腰に驚きながらも、水晶のついた魔力測定器を取り出した。
「それでは、ギルド登録のために、お持ちの『スキル』や『魔力適性』をこの水晶に示してください。それによって、斡旋できる仕事が変わりますので」
「分かりました」
エリーゼが小さな手を水晶に触れさせる。
前世での彼女は、ベッドから動けないほどの病弱だったという。だが、この世界での彼女は「公爵令嬢」。その血筋が持つ魔力量は――。
キィィィィン……!
突如、水晶が目も眩むような黄金の光を放った。
受付嬢が「な、何ですかこの魔力量は……!?」と椅子から転げ落ちそうになる。
「光属性の最上級……いえ、これは『聖属性』に近い? それに、この緻密な魔力制御の数値は一体……!」
驚愕する受付嬢を前に、エリーゼは小首を傾げていた。
「あら? 私、落馬した後に、レオンの脚の治療のために毎日ちょっとずつ魔力を練る練習をしていただけなんですけど……」
俺は内心で息を呑んだ。
あの1年間、彼女が俺の脚に施してくれた回復魔法。あれは、ただの初級魔法などではなかったのだ。彼女の純粋な「治したい」「生きたい」という強い意志が、公爵家の膨大な魔力と結びつき、独自の進化を遂げていた。
(お前は本当に……とんでもない宝物だな、エリーゼ)
商業ギルドの建物は、街の中心部にある活気あふれる石造りの巨頭だった。
一歩中に入ると、無数の商人が行き交い、様々な依頼や取引の書類が飛び交う、独特の熱気に満ちていた。
「す、凄い熱気ね……」
エリーゼが少し気圧されたように、俺の背中の後ろに隠れる。
その途端、周囲の男たちの視線が、一斉にエリーゼへと注がれた。
平民の服を着て、泥を落としたとはいえ、彼女が纏う気品と美しさは隠しきれるものではない。特に、白く細い首筋や、柔らかそうな手首が露出しているのが、男たちの下卑た好奇心を刺激しているのが分かった。
「ちっ……」
俺はわざと低く唸り声を上げ、エリーゼを背後に完全に隠すように一歩前に出た。
獣人の気配、それも元帝国精鋭騎士としての殺気を一瞬だけ解放する。大剣の柄に手をかければ、周囲の有象無象の男たちは、怯えたように一斉に視線を逸らした。
「レオン……?」
「何でもない。……エリーゼ、俺から離れるなよ」
「うん。……あ、あそこの窓口が『新規登録』みたい!」
エリーゼは俺の殺気に気づく様子もなく、受付の窓口へと進んでいった。本当に、こういうところは無防備というか、おっとりしている。
窓口の受付嬢は、エリーゼの丁寧な物腰に驚きながらも、水晶のついた魔力測定器を取り出した。
「それでは、ギルド登録のために、お持ちの『スキル』や『魔力適性』をこの水晶に示してください。それによって、斡旋できる仕事が変わりますので」
「分かりました」
エリーゼが小さな手を水晶に触れさせる。
前世での彼女は、ベッドから動けないほどの病弱だったという。だが、この世界での彼女は「公爵令嬢」。その血筋が持つ魔力量は――。
キィィィィン……!
突如、水晶が目も眩むような黄金の光を放った。
受付嬢が「な、何ですかこの魔力量は……!?」と椅子から転げ落ちそうになる。
「光属性の最上級……いえ、これは『聖属性』に近い? それに、この緻密な魔力制御の数値は一体……!」
驚愕する受付嬢を前に、エリーゼは小首を傾げていた。
「あら? 私、落馬した後に、レオンの脚の治療のために毎日ちょっとずつ魔力を練る練習をしていただけなんですけど……」
俺は内心で息を呑んだ。
あの1年間、彼女が俺の脚に施してくれた回復魔法。あれは、ただの初級魔法などではなかったのだ。彼女の純粋な「治したい」「生きたい」という強い意志が、公爵家の膨大な魔力と結びつき、独自の進化を遂げていた。
(お前は本当に……とんでもない宝物だな、エリーゼ)


