4年の月日は長い。
痩せっぽちだった12歳の少女は年相応に成長し、美しい娘へと変化していた。
豊かな髪は長く伸び艶やかに輝き、小麦色に焼けていた肌は元の白さを取り戻し、手製の化粧水のおかげでソバカスも消えた。
今やシミひとつ無い、ふっくらのもちもち肌である。
まぁ、どちらも優秀な侍女であるユリアがせっせとお手入れした賜物ではあるのだが。
低かった身長も伸び、やや細身ではあるもののそれなりに凹凸も出来た。
今なら、化粧をして着飾れば王の目にも止まる筈です、と力説するユリアには悪いが、レイラにはその気は一切なかった。
今更この快適な生活を手放してまで、女の化かし合いに参戦する気にはならなかったし、多少見目が育ったからって、所詮中身は森育ちの野生児だ。
幼い頃から美を追求してきたお姫様達に敵う筈も無いし、何より面倒くさそうとしか思えなかった。
向こうからお呼びでもこない限り、レイラにはしゃしゃり出る気は一切なかった。
「それ、一生ここから動く気ありませんよね」
ため息と共につぶやかれたユリアの言葉はきっと正しい。
「まぁ、数十年後に王がご崩御でもされれば、後宮は解散されるとは思うけど?そうなったら森に帰るのもいいかなぁ?」
今でさえ忘れられてるのにその頃には誰の記憶の端にも欠片も残ってないって、とケラケラ笑えば、「不敬ですよ!」と説教をされた。
真実しか語っていないのに非常に理不尽だ。
ユリアとの会話を思い出してしまって、眉間にシワが寄る。
あの日の説教は長かった。
おまけのように、久しぶりに礼儀作法のお浚いまでさせられたのだ。
まぁ、おとなしく説教を受けていれば良かったのに、ついつい口を挟んでしまったのがどう考えてもやぶ蛇だった。
「雄弁は銀、沈黙は金。説教モードの女性には逆らうな」という義父の貴い教えを思い出した1日だった。
「もう、やめやめ!喉も渇いたし、小川に行こう」
首を振って考えを振り払い、レイラは森の中を流れる小川へと足を向けた。
レイラの足首ほどの深さしか無く、幅も飛び越えてしまえるほどの細やかなものだが、水は澄んで冷たく、喉を潤すのにも丁度いい。
たどり着いた小川で軽く手を洗うと、水をすくって口に入れた。
歩き回って渇いた喉に冷たさが心地よい。
レイラはついでとばかりに被っていたフードを脱ぐと顔を洗い汗を流した。
「ふぅ。気持ちいい〜」
レイラの口からウットリとした吐息が漏れる。
ローブの中にしまいこんでいた長い髪も取り出して三つ編みをほどいた。
緩やかなウェーブを描き、金の髪が黒いローブの上を流れ落ちる。
木漏れ日に輝く様はとても美しく、妖精もかくやという風ではあったが、幸か不幸かレイラにその自覚はなかった。
ユリアに嘆かれるからやらないけれど、本当はザックリと短く……は、無理でも、せめて半分の長さにしたいと常々思っているくらいなのだ。
レイラは小川の側の倒木に腰を下ろすと、髪を揺らして通り過ぎていく風に目を細め、葉ずれの音に耳を澄ました。
遠くで小鳥の鳴く声が聞こえ、レイラは微笑んだ。
(あの鳥、美味しいんだよね……)
その時、ジャリッと小石が鳴る音がして、レイラはパッと目を開けた。
この森に住む動物達が立てる音にしてはあまりに重たい音だったからだ。
咄嗟に立ち上がったのは完全に条件反射で、そうして、視界に捉えた音の正体にレイラは驚きのあまり固まる。
そこには驚いた顔の美丈夫が立っていた。
痩せっぽちだった12歳の少女は年相応に成長し、美しい娘へと変化していた。
豊かな髪は長く伸び艶やかに輝き、小麦色に焼けていた肌は元の白さを取り戻し、手製の化粧水のおかげでソバカスも消えた。
今やシミひとつ無い、ふっくらのもちもち肌である。
まぁ、どちらも優秀な侍女であるユリアがせっせとお手入れした賜物ではあるのだが。
低かった身長も伸び、やや細身ではあるもののそれなりに凹凸も出来た。
今なら、化粧をして着飾れば王の目にも止まる筈です、と力説するユリアには悪いが、レイラにはその気は一切なかった。
今更この快適な生活を手放してまで、女の化かし合いに参戦する気にはならなかったし、多少見目が育ったからって、所詮中身は森育ちの野生児だ。
幼い頃から美を追求してきたお姫様達に敵う筈も無いし、何より面倒くさそうとしか思えなかった。
向こうからお呼びでもこない限り、レイラにはしゃしゃり出る気は一切なかった。
「それ、一生ここから動く気ありませんよね」
ため息と共につぶやかれたユリアの言葉はきっと正しい。
「まぁ、数十年後に王がご崩御でもされれば、後宮は解散されるとは思うけど?そうなったら森に帰るのもいいかなぁ?」
今でさえ忘れられてるのにその頃には誰の記憶の端にも欠片も残ってないって、とケラケラ笑えば、「不敬ですよ!」と説教をされた。
真実しか語っていないのに非常に理不尽だ。
ユリアとの会話を思い出してしまって、眉間にシワが寄る。
あの日の説教は長かった。
おまけのように、久しぶりに礼儀作法のお浚いまでさせられたのだ。
まぁ、おとなしく説教を受けていれば良かったのに、ついつい口を挟んでしまったのがどう考えてもやぶ蛇だった。
「雄弁は銀、沈黙は金。説教モードの女性には逆らうな」という義父の貴い教えを思い出した1日だった。
「もう、やめやめ!喉も渇いたし、小川に行こう」
首を振って考えを振り払い、レイラは森の中を流れる小川へと足を向けた。
レイラの足首ほどの深さしか無く、幅も飛び越えてしまえるほどの細やかなものだが、水は澄んで冷たく、喉を潤すのにも丁度いい。
たどり着いた小川で軽く手を洗うと、水をすくって口に入れた。
歩き回って渇いた喉に冷たさが心地よい。
レイラはついでとばかりに被っていたフードを脱ぐと顔を洗い汗を流した。
「ふぅ。気持ちいい〜」
レイラの口からウットリとした吐息が漏れる。
ローブの中にしまいこんでいた長い髪も取り出して三つ編みをほどいた。
緩やかなウェーブを描き、金の髪が黒いローブの上を流れ落ちる。
木漏れ日に輝く様はとても美しく、妖精もかくやという風ではあったが、幸か不幸かレイラにその自覚はなかった。
ユリアに嘆かれるからやらないけれど、本当はザックリと短く……は、無理でも、せめて半分の長さにしたいと常々思っているくらいなのだ。
レイラは小川の側の倒木に腰を下ろすと、髪を揺らして通り過ぎていく風に目を細め、葉ずれの音に耳を澄ました。
遠くで小鳥の鳴く声が聞こえ、レイラは微笑んだ。
(あの鳥、美味しいんだよね……)
その時、ジャリッと小石が鳴る音がして、レイラはパッと目を開けた。
この森に住む動物達が立てる音にしてはあまりに重たい音だったからだ。
咄嗟に立ち上がったのは完全に条件反射で、そうして、視界に捉えた音の正体にレイラは驚きのあまり固まる。
そこには驚いた顔の美丈夫が立っていた。

