後宮のすみっこには天才薬師がいるらしい ~いないもの扱いだった人質の私、趣味の調薬で国を救って正体がバレました~

 最初こそ、ユリアには刺激が強いだろうとレイラが森の中で下処理をして帰ってきていたが、主人にそんな事をさせられないと頑張って覚えたユリアは侍女の鑑である。

 今では、鼻歌交じりに野鳥の羽をむしり取るまでになった。
 王の側室と侍女としては、かなり間違った方向に爆進しているが、まぁ、そこを気にしていたら餓死していたと思うので、考えたら負けである。

 業者の出入り口が近いのを幸いに、仲良くなった商人になめした毛皮や乾燥した薬草を売ることで、引き換えに食料や日用雑貨もゲット。

 すっかり精神的にも逞しくなり、快適な生活を手に入れた。

 ちなみに、草ぼうぼうだったバルコニー周辺はしっかり開拓されて、青々とした野菜たちが四季折々の実りをつけている。

「本当に仕込んでくれた両親とババ様に感謝、よねぇ」
 ここでの両親は、当然育ての親の方である。
 猟師を本職としていた彼らは、森で生き抜く術をしっかりとレイラに仕込んでくれた。
 
 更に同居していた祖母は薬師として生計を立てており、実の孫達は覚えるの面倒と逃げ出した為、興味を示したレイラに喜び勇んで知識を分けてくれた。

 傷薬になる薬草を摘みながら呟くレイラの足取りは軽い。

 予想よりも薬草の成長が良かったので、思っていた以上の量が取れた。
 ユリアの服がだいぶくたびれてきていたので、コレで新しい物に替える目処が立つ。

 最近では薬草そのものではなく、軟膏や丸薬に加工したものも売れるようになったのだ。

 はじめは自分達用に作っていたハンドクリームだった。
 水仕事から庭仕事まで自分達でこなす為、どうしても手が荒れる。
 アカギレだらけになったユリアの手が可哀想で、何気なく渡した軟膏はすこぶる好評だった。

 さらには仲良くなった下働きの女達が、1人だけ手荒れ知らずのユリアに気づいた。
 軟膏を分けて欲しいと言い出して、更にそこから商人へと話がつながった。

 無料で分けていた物が硬貨に換わった当初は、なんとも不思議な気持ちになったものだ。

 誰でも取れる薬草そのものよりも、レイラしか調合出来ない薬の方が高値で引き取ってもらえるのは当然で、おかげでかなり生活にも余裕ができた。

 そうして、王や王妃と側室、侍女などの後宮の住人達には見向きもされない裏で、レイラとユリアは、独自の人脈を着々と作り暮らしてきたのだ。