後宮のすみっこには天才薬師がいるらしい ~いないもの扱いだった人質の私、趣味の調薬で国を救って正体がバレました~

「おやおや。やっぱり眠っちまったんだね」
 はしゃぎ疲れてぐずるレイラを、薬草と一緒に採取かごに放り込んで戻ってきたサントスに、ババ様が笑って籠の中を覗き込んだ。
 小分けにされた薬草の束にうもれるように、レイラがすやすやと眠っていた。

「分かっているなら、止めてくださいよ。いくらレイラが小さくても、流石に山から背負って帰るのは重いです」
 肩に食い込んだ採取かごの紐にため息をつきながら、サントスは眠っているレイラを起こさないようにそっと背中から籠を降ろした。

「なに言ってるんだい。旅を始めたら、運ぶ荷物はこんな重さじゃすまないんだから、これも訓練のうちさ」
 クツクツと笑いながら、ババ様が薬草の束を籠から取り出していく。

「おや、残念ながらテンタイルの束は駄目になっちまったね」
 眠っているレイラの腕にぎゅっと抱きしめられた束は、熱と圧力でしなびていた。

「あぁ……。よりによってテンタイルかぁ」
 採取に適した時期にはまだ少し早いため、見つけるのが大変な薬草を駄目にされて、サントスはガックリと肩を落とした。

(今回はレイラがいつの間にか見つけていたからラッキーと思っていたのに)
 一つの株から採れる量は限られているから、再び見つけ直し確定である。

「大事なものは避けておくことだ。一つ勉強になったね。レイラが寝ている間に、サッサともう一回行っておいで」
 無情にもババ様にシッシッと手を振られ、サントスは肩を落としながらも再び森の中へと入っていくのだった。