悪女の代行を演じたら氷の御曹司に永久就職⁉〜お見合い破談に大失敗!私は彼に丸め込まれ溺愛されてます~

「好き嫌いはありますかー?」

「無いかな、きちんと何か食べるって会食とかぐらいで基本は食べないから」

「何を、マジで言ってるんですか」

キッチンに立った私は冷蔵庫開けて絶句した。
基本食べない?
確かにこの家でと言うか彼が食事をしたのを見たことない。
飲み物だけは飲んでたっけ。

「今日の日和は面白い」

面白くないです。
人の心配してる場合じゃないでしょ?
そんな彼を無視して短時間で消化に良く疲れた胃を温めるメニューっと。

取り出したのはカブと鶏のササミそして少しの生姜。
高級フレンチのような華やかさはないけれどじんわりと身体の芯から温まる桜井家の家庭の味。
カブを丁寧にすり下ろし昆布で取った優しい出汁に合わせる。
ササミを細かく裂いて加え最後に風味付け程度の薄口醤油と少しの塩とおろし生姜を添えてとろみをつけた。

「カブのみぞれスープの完成!お待たせしました。こっちに座ってください」

「これ、作ったのか」

リビングのローテーブルに器を運ぶと彼はほんの少し笑みを浮かべた気がする。

「そうです。見た目は地味ですけど、胃には良いんです。いいから、冷めないうちに早く食べてください」

私に言われるがままゆっくりとソファに腰掛けた。
いつもなら少しくらい意地悪を言うはずの男が今はただ湯気の立つ器を黙って見つめている。

「食べないんですか?だったら、」

「た、たっ、食べるよ!」

私が急かすと長い指でスプーンを持ちスープを口に運んだ。
とろみのあるスープが彼の喉を通り疲れた身体へと染み込んでる気がする。
彼は目を見開いたけれどすぐ視線を落とし静かにスプーンを動かし続けた。

(顔に赤みも増したし良かったかな…?)

私は彼の隣に座り携帯でSNSをチェックする。
黙ってても居心地が良い。
モコモコのルームウェア越しの腕に彼の身体が微かに当たってるのも何か良い。