悪女の代行を演じたら氷の御曹司に永久就職⁉〜お見合い破談に大失敗!私は彼に丸め込まれ溺愛されてます~

そして迎えた週末。
気象庁が“過去最大級”と警戒を呼びかける台風が真正面から直撃しつつある。
お昼を過ぎる頃には豪雨となり猛烈な暴風がホテルの巨大な強化ガラスをガタガタと激しく揺らし始めた。
そして思った通り公共交通機関は計画運休で完全にストップし全てキャンセルになったらしい。

「どういうことだ! 飛行機が飛ばないのはホテルのせいじゃないが今すぐ部屋を用意しろと言っているんだ!」

「申し訳ございません。ただいま満室になっておりまして…」

ロビーのあちこちで怒号が飛び交いスタッフたちが対応に追われてる。
フロントカウンターの左端に眼鏡をかけ髪をタイトにまとめた私は何とか状況打破に動いてた。

「どうにかして下さい。子供が居るんです」

その声のする方を見ると小学生くらいの男の子とお兄ちゃんと大人しく手を繋ぐ幼い女の子が不安そうにこちらを見つめてくる。
うちは少し他より高級なのに満室と言うことはビジネスホテルとかも満室なんだと思う。

いつもは広々として優雅さを売りにしているホテル・ドゥ・ミエールのグランドロビーは暴風雨から避難してきた人達や交通機関が動かないことで国内外の人達で大パニックに陥ってる。

「What do you mean, no rooms?! We have children with us! This is unacceptable!」

子供達もビクッと身体を震わせたのが分かった。

海外の裕福そうな家族連れが言葉の壁と慣れない災害への不安からスタッフに怒鳴り散らしてる。
対応していた宮永さんも怯えて激しい外国語に完全に押され顔が強張り立ち尽くしている。

(…まずい)

このままじゃ他のお客様にも不安が伝染してしまう!

「私が代わるからあちらのご家族をお願い。これをあの子達に上げて」

宮永さんに自分のポーチからチョコレートの箱を渡して場所を変わった。
食事を摂れない時用にいつもポーチに忍ばせていてまさかそれが役に立つとは思わなかった。
子供達を見ると震えが止まり嬉しそうにチョコレートを口に含んでる。

「Please calm down, sir. Hôtel de Miel will absolutely protect you and your beautiful family.」
(どうかご安心ください。ホテル・ドゥ・ミエールはお客様と大切なご家族を絶対にお守りいたします)

ゲストの言葉で優しく語りかけると予想外の対応に怒り狂っていた父親はピタリと口を閉ざした。
落ち着いたお客様に笑みを浮かべオフィスへの直通電話で的確な指示を貰うため連絡を入れる。

「フロント栗原です。ロイヤルスイートのインスペクション(客室確認)は終わっていますか?すぐにそちらを開放して下さい。それから厨房に連絡して避難されているお子様方へ温かいココアとスープのデリバリーを最優先でお願いしてください」

流れるように特別客室を確保し不安がるお客様には説明して子供達にはフロントからロビーに出て目線を合わせ笑顔をみせた。

「大丈夫だからね、安心して」

その対応にロビー全体を包んでいた不穏な空気が穏やかなものへと変わっていった。