悪女の代行を演じたら氷の御曹司に永久就職⁉〜お見合い破談に大失敗!私は彼に丸め込まれ溺愛されてます~

「え…?お客様からの感謝の声で社長賞表彰? なんでこのタイミングで私の好感度爆上がりしてるの…」

ホテルのバックヤードで秘書さんから「社長室へ17時に来て下さい」とスタッフ達の目の前で言われては断れない。

「栗原さん、凄いです!」

宮永さんには涙目の私が嬉し涙に見えたんだと思う。
フロント主任も「良かったな」と肩を叩き喜んでくれてる。
先にこの話(表彰)を言って欲しかったのに本当にタイミングが悪すぎる。

社長と変な出会いをする前なら「真面目に働いてて良かった!」と泣いて喜ぶところだけど少し前に絶望的な連絡に返事をしてしまってる。

『本日18時にアークヒルズのラウンジに来て下さい。今後についての話がある、と社長がおっしゃられてます』

社長表彰を聞く10分前に連絡が来て“今後=お断り”と判断。
やっとビクビクする生活も終わると思い誘いを受けた直後のこれ。

「17時にこの制服にメガネで社長室に行って…18時に別の場所…1時間もないじゃん‼移動時間だけで30分かかるのに変装も… 」

でも諦めない。
謝るのは簡単なんだけどバレて詐欺とか訴えるとか言われても困る。
大好きなホテルのフロントの仕事も辞めたくない!
だったら社長に断って貰えるまで頑張るしかない。

「あのね、悪いんだけどめちゃくちゃ派手で露出高めの服を急いで持って来て…理由?そんなのまた話す」

健太はまだ何か言いたげだったけど電話を切って次の行動への対策を頭に巡らせる。

瑞希お嬢様キャラの服装は健太に任せてタクシーを呼ぶ手配をしなきゃ。
ホテルのフロント係を舐めて貰っては困る。
コンシェルジュの仕事もこなす私にはどうすれば良いのか判断が早い。

「社長、絶対負けませんから」

グッと両手を握りしめ上階に居るであろう彼に呟いた。

――17時10分。

私は制服姿で社長室に控え目に頭を下げて彼と秘書の前にいた。

「素晴らしいですね、栗原さん。こんなにお客様からお褒めの言葉が。今後のグループの顧客対応について君の意見をじっくり聞きたい」

あの日のように優雅にソファに座るわけではなく距離がどんどん詰められてくる。
だいたい冷徹な社長はいつも笑顔なんて見せないのに珍しく目尻を下げ見つめられてこっちの心臓がもたない。

「…はは、有難いお言葉ばかりで」

こんなに時間がないのにまたもタイミングが悪い。
社長…そんな話はまた機会があればお話しましょう。

「私のような者が意見などおこがましいので、あの、これで失礼しますッ!」

「えっ、栗原さん?」

私は社長が次の言葉を発する前に早口でお礼を言い深々と頭を下げ部屋を飛び出した。