悪女の代行を演じたら氷の御曹司に永久就職⁉〜お見合い破談に大失敗!私は彼に丸め込まれ溺愛されてます~

俺のような世界で生きてきた人間は本音と建前そして裏切りに敏感だ。
騙そうとする奴らは必死に良い人間の仮面を被る。

「指定場所はホテルから車で30分かかるアークヒルズの最上階ラウンジ。時間はそうだな18時で」

「ったく。そう言う行動が執着なのに」

ふっと笑う秘書に気付かないふりをしてこれから始まる嫌がらせに少し心が躍ったように思える。

「これは友人として…」

と前置きして、

「こんなことばかりしてると本気で嫌われるぞ」と俺にクスッと笑う。

「そんなの、」

分かってる。
嫌われても構わ…何だかその後を考えたくない。
今は…

「面白いから良いだろ」

気づけば俺の口角は弧を描いてる。
逃がすわけがない。
こんな計算外の周りに一人もいないタイプの面白い女をここでみすみす逃がすほど俺は物分かりのいい男ではない。

「ひねくれ過ぎだろ」

「それは一番俺が分かってる」

17時10分に地味なフロント係としてホテルの社長室に呼び出され表彰を受けて18時にホテルから離れた場所であの派手な悪女の姿で現れなければならない。
フロント係の仕事が終わってからあの悪女メイクとドレスアップに変装し別の場所へ移動する。

「どうする…?」

俺の狙いはどちらかを遅刻させることで絶対的に時間が足りないはずだ。

「嘘を吐いてすみませんでした」と彼女が謝る顏が…俺は…見たいのか?

それなら2人同時に呼び出せば良い。

周りにいる打算と保身まみれの人間たちとは明らかに違う彼女は俺の地位も財産もこの容姿すらも一切何も求めていない。
むしろ一刻も早く逃げ出そうとして可愛い演技をしている。

「そうだな、どうでも良い」

ただの面白い女に対する好奇心だった。
一過性の暇つぶし極上のエンターテインメント。
いつでも手に入るはずのチェスの駒、最初はその程度にしか思っていなかった。

「どちらの彼女が俺に従う… それとも計算を狂わせるか?」

理不尽な言い訳で俺を振り回し俺の完璧な計算をとことん狂わせていく彼女を追いかけているうちに胸の奥でドロドロとした物に俺は侵され始めてる。

完璧なチェックメイトの罠を仕掛け俺は窓から眼下を見下ろし軽く微笑んだ。