悪女の代行を演じたら氷の御曹司に永久就職⁉〜お見合い破談に大失敗!私は彼に丸め込まれ溺愛されてます~

秘書の西脇 和也(にしわき かずや)は長年の友人で失礼なことを平気で言う男。
片手で足りるほどしか信用できる人間がいない俺にとってこいつは特別で産まれながらにして“逢坂”という巨大な檻に囚われている俺の良き理解者。

「何と言うか、思春期を迎えた男の子みたいで見てて面白い」

「し、思春期?そんなわけない、俺は女に不自由したことがないんだぞ?」

「それを亡くなられたご両親が見たら泣きますね」

両親を幼い頃に事故で亡くし親代わりで現、逢坂グループ当主の厳しい祖父と真逆で優しい祖母に育てられた。
日本経済の頂点に君臨する巨大財閥の次期総帥候補という椅子は祝福などではなく弱肉強食の汚い権力闘争の舞台に過ぎない。

「死なないでくれたらこう言う性格になって無かっただろうな」

物心がつく前から常に俺を利用しようとする大人達が周りに居て足を引っ張り引きずり下ろそうとする。
そんなつまらない世界で生きてた俺に光を灯したのは彼女だった。

「社長の誘いに乗らないなんて面白いじゃないですか」秘書はククッと笑う。

「まあ、そうだよな」

俺のアッシュブロンズの髪や氷のようだと評されるプラチナブルーの瞳も一族の面倒な人達にとっては逢坂の血筋を示す看板でしかない。
美貌など都合のいい飾りで少しでも弱みを見せれば従兄弟や叔父達がハイエナのように群がりすべてを貪り尽くそうと目を光らせている。

「彼女は新鮮ですね、ウサギみたいで可愛らしい」

「お前には彼女がウサギに見えるのか?病院に行ってこい」

「そう言う冗談が通じないところどうかして下さい。まあ、そうですね…私から見れば、んーっ、社長は、ウルフ、白銀の狼ってとこでしょうか」

冗談が通じないところ、か。
息の詰まる世界で生き残るため徹底して無駄を排除する冷徹な男になることを選んだ。

31年の人生で俺が他人に注いできたのは完璧な計算と利害関係だけ。
だからあの夜の見合いも俺にとっては一族の奴等が押し付けてきた退屈で無駄な仕事の一つに過ぎなかった。

「他の男にあんな顔を見せる暇があるなら俺の相手をしてもらおうか」

俺の誘いを3度断ったバツを与えてやる。

「17時10分『お客様からお礼の言葉を預かっている。社長から表彰を行う』とフロントに伝えろ」

だが、これだけで終わらせるほど今の俺は甘くない。

「それとあっちの彼女にも連絡を入れろ」

「は? 彼女にも?断られるかと思いますが…」

「断れない理由を作れば良い。俺が今後について話があると、」

これほどまでに分かりやすく必死に嫌われようとして動く人間を俺はこれまでの人生で見たことがない。

…なのに彼女にそれをされている。

「執着もほどほどに」

「執着?」

「時間の無駄が嫌いなはずでは?」

「俺は彼女が何を企んでるのかゆっくり暴いてやりたいだけだ」