今から婚約破棄直後の悪役令嬢が通ります。ご注意ください。

 ええ。もし、私が男性ならばベロニカの容姿が美しくても、そんな女性は結婚相手に選ばないでしょうね。

「なんですって……? 私を揶揄っているの? ……お断りするわ。ついさっき、男性に対して絶望したところだもの。何があったかを知っているでしょう」

 私は眉を寄せて、そう言った。

 いきなり結婚を申し込んだクラウスが何をしたいのかわからないけれど、婚約破棄されたばかりの貴族令嬢にこんなことをする男性は珍しいでしょうね。

 しかも……私たち二人は、初対面よ。驚くしかないわ。

「それはいけませんね……ですが、無理もないことと思います。僕も気が急いてしまって、ベロニカ様へお気持ちをお伝えすることを急ぎ過ぎました。どうかお許しください」

 クラウスは騎士らしく胸に手を当てて、私へと微笑んだ。

 私はそんな彼の表情を見て、ますます疑わしくなった。まるでこういう方向へ会話が進むように誘導したように思えたもの。

 ……彼は何者なのかしら。もしかして、エドガルド殿下の手の者かもしれない。