今から婚約破棄直後の悪役令嬢が通ります。ご注意ください。

 そう言って微笑んだクラウスは、一歩近づいた。私はその場に留まった。

 嘘がわかる……そんなことが、本当に可能なの?

 この世界には魔法の概念はないけれど、知られていないだけで、特殊な能力を持っている人はどこかにいるかもしれない……それは、前世の世界でも同じことだけど。

 もし、クラウスに私が嘘をついたことがわかるのなら、本当は彼と一緒になりたいと思っていることを誤魔化すことなんて……無理だと気がついたからだ。

「僕は嘘がわかるんですよ。本当は結婚したいですよね?」

 ここで『いいえ』と言ったり『もう少し時間を置きたい』と言っても、それが嘘ならば彼にはわかってしまうのよね。

 もし……私が目の前のクラウスと結婚したいと、そういう気持ちがあるのなら。


◇◆◇


「……ベロニカは僕との婚約を、了承してくださいました」

「そうか。血筋家柄教養など、すべて必要とする王妃は、彼女でなければいけない……エドモンドは、本当に馬鹿なことをした。廃太子を急いだ方が良いだろう……」

 僕の父たる国王陛下は、頭を押さえてそう言った。実際頭が痛いのだろう。